勝利至上主義のフランス。デシャンのサッカーはつまらない? (2ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi photo by AFLO

 現役時代は、フランス代表としてワールドカップ(1998年)とユーロ(2000年)のタイトルを手にし、クラブでもマルセイユとユベントスでチャンピオンズリーグを2度(1992-93、1995-96)制しているデシャンは、監督になっても勝負強い。

 監督として初めて指揮したモナコ時代は、チャンピオンズリーグのファイナリストとなったことで一躍脚光を浴びたが(2003-04)、その後も2部に降格したユベントスでセリエB優勝(2006-07)、マルセイユではリーグとリーグカップの二冠を達成している(2009-10)。常に勝者であり続けるデシャンに対し、フランス国民が多くを期待するのも当然である。

 もちろん、その勝負強さには、戦術家としての裏付けもある。たとえばこの試合では、後半の62分にミスが目立ったFWのジルーを下げて、アントワーヌ・グリエスマンを投入。「ナイジェリアに疲れが見え、ディフェンスにスペースが生まれ始めていた」(デシャン)と見るや、スピードのあるグリエスマンを左サイドに入れて、カリム・ベンゼマを1トップに移している。

 するとその8分後には、ベンゼマがグリエスマンとのワンツーから抜け出し、決定的な場面を迎える。惜しくもシュートはGKエニェアマに弾かれたが、デシャンの采配が効果を示したことは間違いない。

 さらに、デシャンが切った2枚目のカードは、後半アディショナルタイムの4分のこと。85分にFWのロイク・レミーを準備させていたが、その投入を取り止めて試合の状況を静観すると、2点をリードしたのを確認した後、FWヴァルブエナを下げて、守備力の高いMFムサ・シソコを投入して仕上げにかかった。1枚カードを残した采配に疑問の声もあるだろうが、少なくとも試合後の会見では、それはまったく話題にならなかった。

 いずれにしても、石橋を叩いて渡るデシャン采配の面目躍如と言ったところだろう。

 とはいえ、今大会のフランス代表のサッカーが、守備的で退屈かと言えば、もちろんそんなことはない。グループリーグで大量ゴールをマークしていることでも、それは証明されている。よって、少なくともポゼッションにこだわるスタイルではないが、相手によって自らの戦い方を変えることができるチームだと解釈するのが適当だろう。デシャンのチームらしいと言えば、その通りである。

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