クラブの試合とココが違う。これがW杯のサッカーだ (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 たいていの代表監督は、わかりやすいシステムを選ぶ。オランダの監督ルイス・ファン・ハールは、代表選手をすべて集められるのはブラジルへ飛ぶ1週間前だろうと語った。そのためファン・ハールは、セントラル・ミッドフィールダーに攻撃的ではなく守備的な選手を置かなくてはならないだろう。

「本当の意味での10番を置く『アヤックス型』の3-4-3を浸透させる時間はない」と、ファン・ハールは言う。「1週間ではとうてい無理だ。そういうプレイは本当に込み入っている。ポジション間のバランスをきっちりとらなくてはならない」

 少し前なら代表のなかにも、大会の前に何カ月も練習できたチームがあった。たとえば、2002年にワールドカップを日本と共催した韓国がそうだった。

 だが、もうそんなことは不可能に近い。ベルギー代表監督のマルク・ウィルモッツは、選手にはクラブで担っている役割をそのまま与えるつもりだと語っている。「クラブがすべてやってくれて、私はそれを引き継ぐだけだ。代表チームで選手を上達させることなどできない」

 ワールドカップで革新的な戦術が披露されるなどと期待しないほうがいい。そんなものをつくり上げる時間はない。

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