2014.04.27

仏リーグ独走のPSG。フランス語に定着した「ズラタンする」

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】パリ・サンジェルマンの奇跡(2)

 パリ・サンジェルマン(PSG)を買収してすぐに、カタールから来た経営陣はフランス・フットボール界の移籍金記録を破った。パレルモからハビエル・パストーレを4200万ユーロ(当時のレートで約47億円)で買ったのだ(それなのにパストーレは「いずれはPSGより大きなクラブでプレイすること」が夢だと語って、微妙な空気を振りまいた)。

 PSGが新たな資金を得てから最初のシーズンに、小さなクラブであるモンペリエに次いで2位に終わると、多くのフランス人が声高に笑った。だが2012年の夏、PSGは移籍市場に世界最高の1億4500万ユーロ(当時のレートで約145億円)を投じた。最も目を引いたのは、ブラジル代表主将のチアゴ・シウバとスウェーデン人FWのズラタン・イブラヒモビッチを、ACミランから同時に獲得したことだ。

今季もPSGを牽引してきたイブラヒモビッチ(photo by Getty Images) PSGがふたりを簡単に手に入れられたわけではない。「僕も家族もミランを離れたくなかった」と、シウバは言った。イタリア人フットボールライターのトマッソ・ペリツァーリが書いたように、イタリアから見れば「フランスはフットボールの国ではない。試合は行なわれているようだし、テレビ中継もしているのかもしれない。でも、イタリアでは誰も関心を持っていない」。もしフランスのチームがイタリア勢に勝ったら……とペリツァーリは言った。イタリア人は「人が犬をかんだ」ような気がするだろう、と。

 フランス人とカタール人がタッグを組んだ「新顔」の金持ちチームに、フットボールのエリート層は落ち着かない思いでいた。ただしディレクタージェネラルのジャンクロード・ブランは、PSGが業界のルールにきちんと従っていたと語る。