2013.09.15

レアルにとってベイルは、ピカソの絵のようなものだ

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】スーパースターの価値(後編)

 ガレス・ベイルはこの夏最高の買い物とは言えないだろう。スペインでどれだけやれるかは未知数だし、持ち前の素晴らしいスピードにケガの影響が及ばないともかぎらない。

トットナムからレアル・マドリードに移籍したガレス・ベイル。昨季はプレミアで21ゴール(得点ランク3位)をあげた。左はその練習を見つめるジネディーヌ・ジダン (photo by GettyImages) それでもベイルは、周りをわくわくさせてくれる選手だ。彼はまさにスーパーヒーロー。メジャーリーグのオークランド・アスレチックスのGMで、統計を重視する「マネーボール」の概念をチーム強化に持ち込んだビリー・ビーンは、驚きの声を上げる。「もし彼がアメリカに生まれて、サッカーをやっていなかったら、今ごろは(NFLの)ニューヨーク・ジェッツのワイドレシーバーか、メジャーリーグのセンターか、NBAのどこかのチームのエースになっているだろう」

 ベイルを買うということは、毎年きちんと利益をあげる機械を買うこととは違う。言うなれば、それはピカソの絵を買うようなもの、持ち主の地位を高めてくれる美しいものだ。レアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長や、マンチェスター・シティのオーナーであるシェイク・マンスールがアートのコレクターだと聞くと、実に納得がいく。

 フットボール選手の値段は上がりつづけているものの、まだ十分に手の届く額ではある。1990年代以降、クラブはテレビ放映権やレプリカユニフォームを売ることで自らのブランド力を金に換えていった。国際監査法人のデロイトによれば、レアル・マドリードの年間収入は97年から6倍にふくらみ、最新の数字で5億1300万ユーロ(現在のレートで約677億円)に達している。世界のスポーツクラブでは最高の収入だ。