2013.09.14

レアルはなぜベイル獲得に1億ユーロも出したのか

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】スーパースターの価値(前編)

 さしものフットボール界も、理解に苦しむニュースだった。レアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長が、トットナムのFWガレス・ベイルを1億ユーロ(約132億円)と伝えられる記録的な移籍金で買ったというのだ。「あきれてモノが言えないっていうのは、このことだね」と、アメリカ代表監督のユルゲン・クリンスマンは語った。

9月11日、レアル・マドリードの練習に合流したガレス・ベイル。ウェールズ代表の24歳。昨季はプレミアで21ゴールをあげた(photo by GettyImages) 確かにこの金額は、ビジネスのことだけを考えるなら、まったくもって理解に苦しむ。この夏にモナコが買ったFWラダメル・ファルカオや、パリ・サンジェルマンが買ったFWエディンソン・カバーニの移籍金についても、同じことが言える(ファルカオは4500万ユーロ、カバーニは6400万ユーロ)。フットボールにおける市場の意味を理解するには、フットボールはビジネスではないということを知らなくてはならない。

 その点を理解するのにうってつけの場所が、ペレス会長の寝室だ。建設業で大富豪となったペレスは10年ほど前、当時レアルにいた4人のスター選手と一緒に写真を撮った。ジネディーヌ・ジダン、デイビッド・ベッカム、ロナウド、そしてルイス・フィーゴである。アートについてペレスに助言する立場にある人物が、この写真を大きく引き伸ばした。

「ダブルベッドの半分くらいある写真だった」と、『白の軍団──ベッカムとレアル・マドリードの真実』(邦訳・ランダムハウス講談社)の著者ジョン・カーリンは書いている。「ダブルベッドの半分くらいの大きさだと私が知っているのは、ペレスがこの写真を見せるために私を寝室に連れていったからだ」。これは冷静なビジネスマンのやることではない。