U-20W杯総括。日本はアジアの中で遅れをとった (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Getty Images

 左利きのテクニシャン、MFフマン・タレクが長短のパスを操り、FWのアリ・カシムやファルハン・シャコルといったスピードあるアタッカーを生かす。そんな攻撃は、常に相手チームの脅威となった。その一方で、キャプテンのGKモハメド・ハメードを中心とした守備陣は常に体を張り、粘り強く相手の攻撃を防いでいた。

 しかも、グループリーグを1位で突破してベスト4まで進んだのはイラクのみ。大会を通じてコンスタントに力を発揮した、数少ないチームである。

 また、初のベスト8進出を果たしたウズベキスタンにしてもタレント揃いの好チームであり、2大会ぶりのベスト8進出となった韓国は非常に勝負強いチームだった。それぞれタイプは異なるが、3カ国いずれも自分たちの特徴を生かして好成績につなげたといえる。

 さて、アジア全体のレベルアップが証明されたという意味では喜ぶべき快挙達成だが、日本にとっては拍手を送ってばかりもいられない事態である。今大会でのアジア勢の躍進は、すなわち自らの危機に直結しかねないからだ。

 現在の20歳以下の選手たちというのは、3年後のリオデジャネイロ五輪で主力となる年代。おそらく2年後には五輪予選が始まるはずだが、そもそも今大会に出場さえできなかった日本にしてみれば、国際経験という点で大きく水をあけられてしまったことになる。

 世界での厳しい戦いをくぐり抜けたことは大きな自信になり、また、悔しい敗戦を味わったことは一段と強いモチベーションになる。日本は、そうした経験を積んだ相手とリオ五輪出場を争わなければならないのだ。

 積み重ねた国際経験の差がどれほど大きいかは、昨年のロンドン五輪を見れば明らかだ。

 日本は銅メダルをかけて3位決定戦で韓国と対戦しながら、完敗を喫した(0-2)。日本が2大会連続でU-20ワールドカップへの出場を逃していた間、韓国は確実に同大会で世界の強豪としのぎを削り、経験を積んでいた。

 大一番で両国の間に表れた差は、単に実力だけではなく、国際経験によるところも大きい。ともに疲労が残る大会6試合目。加えて劣悪なピッチ。そんななかでも、いかに自分たちの力を出して相手を上回るかというしたたかさで、韓国のほうが一枚も二枚も上だった。

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