【オランダ】攻撃から守備へ?今、オレンジ軍団で若いDFが育っている (2ページ目)

  • 中田徹●文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 しかし、相手の攻撃力不足に救われて2対0の完封勝利を収めると、オレンジ軍団の若きディフェンス陣は自信をつけたのだろうか。その後、所属チームに戻った彼らは、輝きを放ち始めた。とりわけ、フェイエノールト勢はエールディビジで堅守を続け、今シーズン、久しぶりに優勝争いを繰り広げる名門チーム復活のシンボルとなっている。

 ディフェンス陣が若返ったことで、オランダサッカーの質も変わった。2010年W杯と2012年ユーロでセンターバックを務めたのは、ヨニー・ハイティンハとヨリス・マタイセン。スピードのない両者は、ラインの裏を取られるのを恐れるがあまり、守備ラインを下げてしまっていた。その弱点をカモフラージュするために、2010年W杯では前線のタレントたちも守備に参加。結果、準優勝まで上り詰めたものの、代償として『攻撃サッカー』というオランダ国民のアイデンティティを捨てた。一方、2012年ユーロでは、ファン・ペルシー、スナイデル、アリエン・ロッベンらが「自分たちのサッカーで勝つ」と意気込み、攻撃にアクセントを置いたサッカーを試みた。しかし、最終ラインは後ろに下がったままだった。その結果、前後に分断されたオランダは、グループリーグ3連敗でユーロを終えることになったのである。

 しかし2013年、右からヤンマート、デ・フライ、M・インディ、ブリントと並ぶフレッシュな4バックは、ラインを高く上げて守ることに抵抗がない。しかも彼ら若手のスピード感は、過去4年の守備陣と比べても際立っている。守備陣が高いポジショニングをキープし、攻撃陣と適切な距離を保てるようになったことが、W杯欧州予選6連勝という結果につながったと言えよう。

 また、前述のオランダ代表選手のみならず、エールディビジでは続々と若いディフェンダーたちがブレイクし始めている。フローニンゲンに所属するヴィルギル・ファン・ダイクという21歳のセンターバックは、フィジカルを生かした大胆な攻撃参加で今夏にもイングランドのプレミアリーグに移籍しそうな勢いを見せ、昨季ヘーレンフェーンの躍進に貢献した21歳のジェフリー・ハウウェレーウも、センターバックとしてのポテンシャルを欧州で高く評価されているひとりだ。さらに、ユトレヒトに所属する20歳のマルク・ファン・デル・ホールンも、代表の予備選考メンバーに選ばれたことで一躍注目を浴びるようになり、フィテッセに所属する22歳のパトリック・ファン・アーンホルトは、荒削りながら左サイドバックの次期代表候補として呼び声が高い。また、エールディビジ以外では、ベルギーのアンデルレヒトに所属する22歳のブラム・ナイティンクと、ドイツのハンブルガーSVに所属する21歳のジェフリー・ブルマの成長が著しく、代表定着を虎視眈々と狙っている。

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