【イタリア】ミラノダービー直前。サネッティ、長友佑都を語る (3ページ目)

  • ティツィアーナ・カイラーティ●文 text by Tiziana Cairati
  • 内海浩子●翻訳 text by Uchiumi Hiroko

――両親やファケッティからの言葉の他に、あなたに影響を与えたことはありますか?

「ある。それは映画や本のフレーズとか、誰かに何かを言われたこととかそういうことではなくて、プピ財団(恵まれない子供たちに手を差し伸べるための慈善団体。サネッティ夫妻が設立し、ふたりが中心となって活動を続けている)で実際に起こったことだった。設立してから間もなくして受け入れた貧困の子が、僕らにとてもなついてくれて財団のことも気に入ってくれた。その後何年か経って彼が大人になると、財団の指導者のひとりにしてもらえないかって僕らに申し出てきたんだ。その時にみんなが、特に僕と妻がどれほど自分たちのやっていることを誇りに思ったことか……。あの日から、この活動の重要性を本当に理解したように思う。その子が僕らに影響を与えたんだ」

――試合や練習、チームメイトへのケア、ファンとのつながり、メディア対応だけでなくプピ財団のような慈善活動にも全力で取り組むあなたを長友はとても尊敬しています。彼についてひと言いただけますか?

「ユウトはファンタスティックだよ。彼とは気心が合って、よく一緒にいるんだ。日本人がそうであるようにユウトも礼儀正しくて、周囲に敬意を払っていて、助けが必要な人への協力を惜しまない。それに物事に動じなくて、ピッチでも普段の生活でもフェアだ。ちょっと僕と同じタイプだよね。それとユウトは日本とすごく結びついている。今、彼はイタリアにいるわけだけど、根っこはあっち(日本)にあるって感じかな。それがゴールの後でお辞儀のパフォーマンスを取り入れた理由のひとつでもあるんだ。あれは日本へ捧げるパフォーマンスなんだよ。僕にとってユウトは日本の文化とは何たるかを体現する存在なんだ」

――彼は日本のどんなことをあなたに話しているのか、差し支えない範囲で教えてもらえますか?

「ユウトはすごく明るく陽気で、日本のいろんなことをたくさん話してくれる。日本の習慣や生活、そしてサッカーがどんなものなのか、何時間も話しているよ。一番強く印象に残っていることといえば、一昨年の震災の時のこと。あの時、僕らは合宿で一緒にいたんだけど、ユウトはものすごく動揺していた。何をしていいのかわからない様子だった。とにかく何とか電話をかけて状況を理解しようとしていて、どうなっているのか知るために必死だった。そんな彼を見ていて僕も辛くなった。彼が苦しんでいるのに僕は何もしてあげられない。だから僕はなるべく彼の傍にいようした。あの時のことが、彼がいかに日本の人たちを大切にしているのかを僕に深く理解させることになった」

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