2013.01.23

ブラジルW杯を前に「腐敗の打破」に取り組み始めたサッカー大国

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

バロンドールの表彰式に登場したロナウドとブラジルW杯の公式マスコット「フレコ」 (写真●ロイター・アフロ)【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】W杯開催国ブラジルの現在(前編)

 ブラジリア──半世紀前にサバンナの中に造られたこのブラジルの首都は、なんとも愛着を持ちにくい街だ。ブラジリアの主な公共建築物を設計した建築家のオスカー・ニーマイヤーが104歳で亡くなったばかりなのに、こんなことを書くのはいささか気が引ける。だが正直言ってブラジリアは自動車と建築評論家のための都市であり、人間のための街ではない。

 ここは官僚が静かに生活するための場所。ちょうど、旧西ドイツの首都だったボンが熱帯にあるような感じだ。交通渋滞はほとんど起こらない。夕方5時に官庁は空っぽになり、官僚は街の中心を貫く広い高速道路に車を走らせ、家路を急ぐ。ブラジリアはそんな中流の街だ。

 もちろん、すべてがうまく運んでいるわけではない。ホテルではシャワーは冷たいし、ネットはほとんどつながらない。外に出ると熱帯特有の雨がぱらつく中に、軍事警察の姿があちこちに見える。まだこの国は軍が支配しているのかと思えるほどだ。

 しかしブラジリアに最近行ったとき、僕は発展する国の勢いを感じることができた。高速道路のすぐ脇ではスタジアムの改修工事が進んでいる。来年のワールドカップに向けて、完成は間近だ。2016年にリオデジャネイロで開かれるオリンピックでも、ブラジルは世界にその姿を示すことになる。

 ワールドカップは大会ごとに「メッセージ」がある。2006年のドイツ大会は、開催国がナチスの過去と折り合いをつけ、「普通の国」となった姿を世界に示した。2010年の南アフリカ大会では「ワールドクラス」になることが合言葉だった。

 しかし、ブラジルが目指すのは「クリーン」な大会だ。ワールドカップとオリンピックは、この国の新しい姿を世界に示す格好の舞台になる。それはブラジルが腐敗と闘う姿だ。