【イタリア】アズーリなのに攻撃的。プランデッリ代表監督が進める「チーム改革」 (2ページ目)

  • 宮崎隆司●取材・文 text by Miyazaki Takashi
  • photo by Getty Images

 優れた戦術家でありながら、監督本人はそう呼ばれることを極端に嫌う。4−2−3−1が十八番であることは周知の事実だが、選手の特性に応じて形を変えることに一切の躊躇はない。早くから若手の育成に定評を得ていた事実が示すように、イタリア代表を率い始めてからのプランデッリは、歴代監督の誰よりも多くの若手を招集し、実際に起用して世代交代を進めてきた。

 たとえば先のフランス戦を控えた合宿では、20歳のマルコ・ヴェッラッティ(パリSG)と同じく20歳のエル・シャーラウィ(ミラン)に対し、いつもの穏やかな口調で、まるで少年サッカーの先生のような笑顔で語りかけていた。

 曰く、『失敗を絶対に怖がらないように。選手は失敗してこそうまくなる。だからいついかなる状況でも思い切り、感じるままにプレイしなさい』。選手たちはもちろん、それを見ている記者たちからも自然と笑みがこぼれる。となれば、穏やかなムードに包まれるのも当然と言える。トップが代われば組織はこうも変わるものなのか。いずれにせよ、リッピ前監督の時代を思えばまさに隔世の感がある。

 一方で、いざ攻守のメカニズムを確認する作業(トレーニング)になると、あくまでも選手個々の持ち味を存分に発揮するよう促しながら、同時に、"異常なまでに"細部にこだわリを見せる。とりわけ注意が払われるのは、GKまたはDF陣から始まる攻撃の組み立ての手法や流れだ。その狙いは、"いかに速く敵陣の深い位置にまで達するか"。

 左右のサイドに起点を置くパターン、逆にピッチの中央を軸とするパターン、あるいはサイドチェンジの連続から中央に戻して再びサイドへ--などの定石を使い分けながら、常に"敵の最終ラインの裏"を取るまでのスピードが徹底して要求される。

 今年のユーロ前後に、アズーリ(イタリア代表の愛称)は"バルサのコピー"とも揶揄されていたのだが、確かに"ポゼッションに重きを置く"という意味においては共通するところがあるとしても、その縦への展開の"速さ"に大きな違いがある。

 さらに、流麗を極めるバルサのポゼッションと比較すれば、プランデッリのそれはパスの角度が、"より鋭角"、つまり、よりゴールに向かっていく傾向が強い。この点、先日のフランス戦での唯一の得点が、文字通りプランデッリが理想とする形、彼の指揮下で執拗なまでに繰り返しトレーニングされてきた形のひとつだった。

 DFラインからのフィードを中央でFWバロテッリが落とし、それをMFモントリーヴォが受けてドリブルで前方に運び、前線で右斜めに走り込んだFWエル・シャーラウィにパス。そして、それに合わせたエル・シャーラウィがダイレクトでシュートを決めた。

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