【イングランド】マンチーニもシティのやり方にすぐにはなじめなかった (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by GettyImages

 まだフットボール界にはデータを信じたがらない人がいることを、ウィルソンは知っている。だが、彼はこうも言う。「うちの監督はすばらしい戦術眼の持ち主だけど、それはデータを知っているからじゃない。だから僕たちは、監督にデータを見てほしいと思っている。データをもっと使ってほしいし、信用してほしい」

 シティの選手も、なんとかデータに慣れようとしているところだという。ちょうどオリンピックのさなかだったから、ウィルソンはこんなふうに言った。「フットボールクラブに対する世間の目は、オリンピックに比べるとまったくよくない。オリンピックでは選手が目標を定め、それをめざして4年間トレーニングする。金銭的な見返りも、フットボールに比べればわずかだからね」と、彼は言う。「でも、今うちにいる選手たちも信じがたいほどまじめで、プロフェッショナルだと思う。選手たちの姿勢は『プラスになることなら何でもやる。でもプラスにならないなら、聞いている時間がもったいない』という感じだ」

 その例としてフレイグが話してくれたのは、試合当日にデータ分析チームがシティのディフェンス陣と行なっている15分間のセッションのことだ。分析チームはビデオを見せ、データを伝え、個々のディフェンダーがフリーキックのときやボールを奪ったときなどに何をすべきかを話す。フレイグは言う。「そうしたらビニー(センターバックでキャプテンのバンサン・コンパニの愛称)が『じゃあ、そのあたりを手厚くしよう』と言う。チームはそのとおりにやってくれた。ときどきデータが選手の心に響くことがある。『あのさ、プレミアでクロスに最初に触っている本数がいちばん多いのは、うちだって知ってた?』と言ったときとかね。それがフットボール選手なんだ。自分たちをほかのチームと比べ、ほかの選手と比べつづける」

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