【EURO】スペインVSイタリアの決勝は、なぜ大差がついたのか? (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

 結果、スペインの4ゴールはすべて、中央突破のスルーパスから生まれている。

 なかでも象徴的だったのが、デルボスケ監督が「完璧なカウンター」と絶賛した、2点目のゴールだ。

 シャビがボールを持ったとき、前にはオーバーラップしてきた左SBのジョルディ・アルバしかいかなかったにもかかわらず、イタリアは実にあっさりと、ふたりのセンターバックの間を割られている。

 スペインにしても、左右のFWであるイニエスタとシルバが中に入ってきてしまい、ボールと人の動きが中央に偏る傾向は、この試合でも相変わらずだった。

 だが、これだけ楽にパスをつながせてもらえれば、攻撃が少々中央に偏ったところで大した問題ではない。イタリアはあまりにもパスをつながせすぎた。攻撃は悪くなかっただけに、もう少し中盤でスペインのパスワークを封じることが――準決勝でポルトガルがやったように――できれば、試合展開は違うものになっていたはずだ。

 そして、60分に起きたアクシデントで試合はほぼ決した。デルボスケ監督が「あれですべてが変わった」と振り返った、モッタの負傷退場である。

 57分に交代で入ったモッタは、プレイ時間わずか4分ほどで左太もも裏を痛めてプレイ続行不能に。ところが、イタリアはすでに3枚の交代枠を使い切っていたため、10人で戦うことを余儀なくされた。そもそもひとり目の選手交代もキエリーニのケガによるものであったことと合わせ、イタリアにとっては不運が重なった格好だ。

 イタリアの不運はそれだけではない。デルボスケ監督は「とてもラッキーだった。すべてが我々にとって有利に作用した」と話し、こう続けた。

「イタリアはひとり少なくなったうえに、(準決勝からの)試合間隔も我々より1日少なかった。彼らのほうがキツかったはずだ」

 なるほど、これほどの大差がついたことに、運という要素が少なからず影響していたことは否めない。

 しかし、運だけで、あれほど鮮やかなゴールを、しかも4つも決めることなどできはしない。優れた技術はもちろん、高い守備意識、速い攻守の切り替えといった、スペインのよさがすべて集約されたからこそ、である。

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