【EURO】バランスを崩したドイツ。その隙を突いたイタリアが決勝へ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 原壮史●写真 photo by Hara Masashi

イタリアのピンチを美技で救ったGKブッフォンイタリアのピンチを美技で救ったGKブッフォン 決勝戦はスペイン対ドイツ。これが大会前の一般的な予想だった。しかし、そうなれば2008年ユーロと同じ顔合わせになる。2010年W杯でも両者は準決勝で対戦している。広いはずのサッカーの世界が狭く見えることになる。夢が薄れる。ひいてはサッカー界の停滞を意味することにもなる。決して好ましい話ではない。生来の判官(ほうがん)びいきも手伝い、僕は"2強"の構図が崩れることを望んでいた。

 停滞しているスペイン。右肩上がりにあるドイツ。有利な立場にあるのはドイツだ。足下をすくわれるとすればスペインの方ではないか。スペインではなくドイツを1番人気に推すブックメーカーの予想が、現在の両者の関係を端的に物語っていた。

 スペイン対ポルトガルとドイツ対イタリア。波乱の可能性が高いのは前者だと予想された中で、スペインは前日、ポルトガルを辛くもPK戦で退けた。いよいよ決勝はスペイン対ドイツになるのではないか。そんなムードが漂う中で、2試合目の準決勝は行なわれた。

 スペイン対ドイツは見たくないと思う一方で、サッカーそのものの相性でいうと、ドイツが優位な立場にあるのではないかと僕は見ていた。攻撃が真ん中に集まってしまうイタリアに対して、ドイツは外を有効に使う。相手ボールになった瞬間、ピンチに陥りやすいのはイタリア。ひと言で理由を言えばそうなるのだが、両軍が実際にマッチアップした絵を見ると、必ずしもそうとはいえない現実が、目に飛び込んできた。

 ドイツは4-2-3-1の3の右で起用されたクロースが、気がつけば中に入り込んでいた。中央でプレイする方が居心地がいいのだろう。それはベンチからの指示というよりも、自らの意志のように見えた。前半のある時から、1トップ下でプレイしていたエジルとポジションを入れ替わることになるが、少なくとも当初、ドイツが左右のバランスを崩しながら戦っていたことは事実だった。クロースは本来、中央でプレイする選手。レーブ監督はいったいなぜ、準決勝という大一番で彼をそこに起用したのか。

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