【EURO】バランスを崩したドイツ。その隙を突いたイタリアが決勝へ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 原壮史●写真 photo by Hara Masashi

 対するイタリアは、カッサーノのポジション取りが目に付いた。布陣は中盤ダイヤモンド型の4-4-2。両サイドの開きに欠ける布陣だが、2トップの一角を占めるカッサーノが、左右に幅広く流れてプレイすることでそれを補おうとしていた。バロテッリの1トップと言ってもいいほどだった。

 ドイツのバックラインは、そのカッサーノの動きに幻惑された。特にセンターバック2人はポジショニングを乱しながら戦った。先制点を奪われたシーンはその典型で、カッサーノが左サイドでキエリーニ(左サイドバック)とのパス交換から高い位置に進出すると、フンメルスはつられてサイドに飛び出した。すなわち、中央にはバロテッリともう1人のセンターバックであるバートシュトーバーの1対1の関係ができ上がっていた。

 カッサーノは詰め寄ってきたフンメルスをかわしセンタリング。前半20分、長身バロテッリのヘディングが炸裂したのには必然があった。

 試合はイタリアペースで始まった。ドイツの左右のバランスの悪さにつけ込んだわけだが、ドイツも格上を自負するのだろう、すかさず反撃に出る。試合前に予想された展開になっていった。攻めるドイツ。守るイタリア。だが、ドイツの選手が平常心を回復した瞬間、イタリアの先制点が生まれた。世間から格上と目されたチームは、ピッチ上で予想通りのプレイを披露できれば安心する。想定した立ち位置でプレイしている自分自身にホッとするものだが、それが崩れると、ショックは倍増する。イタリアの先制ゴールにドイツは慌てた。

 エジルを右に回し、バランス良く攻撃を仕掛けるが、焦りも手伝ってゴールはなかなか決まらない。そうこうしていると、再びイタリアに一瞬の隙を突かれることになった。前半36分。モンテリーボが自陣深くから蹴り込んだロングキックが、並びの悪いドイツの最終ラインの背後に向かっていく。それはバロテッリが走り込んだコースの鼻先でもあった。

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