【CL】チェルシーを救ったドログバ。運をたぐり寄せたヒーローの一撃

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

同点ゴールを決め、さらにPK戦の最後のキッカーとして優勝に貢献したドログバ同点ゴールを決め、さらにPK戦の最後のキッカーとして優勝に貢献したドログバ 試合後、両クラブの監督は奇しくも同じ言葉を口にした。

「PK戦はクジのようなもの」

 果たして"当たり"を引いたのは、チェルシーだった。

 今年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝は、地の利を生かすバイエルンが攻勢に試合を進めた。バイエルンのハインケス監督が、「多くの得点チャンスを作ったし、相手を上回っていた」と言いたくなるのもよく分かる。

 だが、サッカーは、何回シュートを打ったかではなく、何回ゴールを決めたかを争う競技。それを考えると、攻勢とはいっても、バイエルンのそれはかなり心もとないものだった。シュートこそ次々に放ったものの正確性を欠き、大きく枠を外れるものが少なくなかったからだ。

 この試合でバイエルンが放ったシュートは、実に35本。だが、そのうち枠内に飛んだものは7本に過ぎない。ハインケス監督は「チェルシーはラッキーなチーム。守備的で、よく組織されていた」と、皮肉まじりに話していたが、バイエルンが攻撃的と呼ぶにふさわしい内容だったかは疑わしい。

 試合は、60分を過ぎたあたりから互いに雑な攻撃を繰り返し、攻め合っているというより、ボールを失い合っているような展開となっていった。バイエルンに前半ほどの勢いがなくなっていたのは事実だが、チェルシーもまた、そこにつけ込むにはあまりにミスが多すぎた。

 そんな試合展開だったからこそ、ミュラーのゴールは値千金となるはずだった。残り時間10分を切ってからの、しかも"ホームチーム"の先制点で、勝負は決したかに見えた。

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