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【スペイン】バルセロナに地元育ちの選手が多い本当の理由 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

7 "1秒ルール"

 バルセロナのようにプレイするチームはほかにない。それは強みであると同時に、弱みでもある。他チームで育った選手をチームになじませるのがむずかしくなるためだ。外部の選手にバルサのスタイルは理解しにくい。

 バルサには、世界のトップ10に入っていると思える選手しか買わないという方針があった。だが彼らのなかにも、カンプノウでは活躍できなかった例が少なくない。たとえば、ティエリ・アンリやズラタン・イブラヒモビッチだ。ダビド・ビジャでさえ、スペイン代表でのプレイを通じてバルセロナのスタイルを知っていたのに、脚を骨折する前にもベンチを温めることが増えていた。

 バルサのゼネラルディレクターを務めていたジョアン・オリベルは、移籍に伴うリスクを「1秒ルール」という言葉で説明した。ピッチ内の成功は1秒以内に決まる。選手がチームメイトの動きを理解できず、それを見極めるためにもうコンマ何秒かを必要とすれば、流れが止まってしまう。だから他チームから入ってきた選手は1秒以内で敗戦を招きかねない。

 ペドロ・ロドリゲスは特別に優れた選手ではない。しかしマシア育ちだから、外から来た選手よりもバルサのフットボールをうまくやれる。マシアで育成される選手たちは、少年時代のほとんどをパスゲームに費やす。とくにクライフが大好きな6対3でやるトレーニングだ。フットボールとは「振り付け」だと、クライフはかつて言った。

 そんなふうに考える人はほかにいない。だからバルサの選手は、ほとんどが地元育ちなのだ。それは方針というより、そうせざるをえない部分が大きい。それでも、たいていはとてもうまくいく。

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