2012.04.19

【スペイン】バルセロナに地元育ちの選手が多い本当の理由

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

チャンピオンズリーグ準決勝第1戦では、圧倒的に攻めながらチェルシーに0-1に敗れた。テリー(右)をかわすメッシ【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】バルセロナの戦術(後編)

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4 “3-1ルール”

 相手チームがバルセロナのペナルティエリア付近でボールを持っていたら、バルセロナは「イタリア方式」をとる。チーム内で「3-1ルール」と呼ばれる陣形に切り替える。4人のDFのうち1人が、ボールを持つ相手選手にタックルに行き、あとの3人はその2~3メートル後ろに弧を描くように並ぶのだ。そうすると、二重の守備網をつくることができる。

 グアルディオラはこのルールをイタリアで学んだ。とてもシンプルだが効果は絶大で、他のトップチームが採用しないのが不思議なほどだ。

5 特別なことはしない

 バルセロナはボールを奪っても、何も特別なことはしない。たいていの一流チームは、ボールの支配権が移った瞬間を非常に重要なものと考える。その瞬間は相手の陣形が崩れているから、すぐにカウンターを仕掛ければ得点のチャンスが大きくなる。マンチェスター・ユナイテッドやアーセナルといったチームは、ボールを奪ってから3秒のうちにゴールを決めようとすることがある。そのため選手たちはボールを奪うと、DFの間を抜く縦パスを素早く出そうとする。

 バルセロナの選手は違う。ボールを奪っても、縦パスを出そうとはしない。このチームではボールを奪ったことだけですばらしいとされ、奪った選手はほかに特別なことをする必要はない。ただ、いちばん近くにいるチームメイトにボールを預ければいい。バルセロナの考え方では、ボールを奪ったばかりの選手はピッチ全体が見えていない。したがって、有効なパスを出すには最も適していない選手なのだ。

 この点は、バルセロナが偶然の要素に頼っていないということでもある。バルサは一瞬にしてフォーメーションを整え、相手に「こっちは準備ができたよ」と言っているかのように見える。相手チームはバルセロナがこれからやろうとしていることを正確に知っている。だが、それを止めるのはむずかしい。

 このルールのただひとつの例外は、バルセロナの選手が相手のペナルティエリアの近くでボールを奪ったときだ。その選手はそのままゴールをめざす。