ロムニーはベルルスコーニのような大統領になるのか
経済危機のため昨年11月にイタリアの首相を辞任したシルビオ・ベルルスコーニ。3月17日、パルマ対ミラン戦を観戦するためスタジアムに【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】政治家とスポーツ(前編)
オリンピックの「顔」をつとめるのは、たいてい妙な姿をした動物のマスコットだ。だが2002年にアメリカのソルトレークシティーで開かれた冬季オリンピックの顔は、企業買収ファンドで大儲けした大富豪だった。
「ミット、ウィ・ラブ・ユー」と、この大会のために作られたピンバッジのひとつには書かれている。大会組織委員長だったミット・ロムニーの角張ったあごをかたどったデザインだ(妙な姿の動物たちが脇役をつとめていた)。
ロムニーは今、米共和党の大統領候補を決める予備選を戦っている。もし彼が大統領候補の座を勝ち取れば、それはオリンピックのおかげだろう。僕らの生きるこの奇妙な時代に、スポーツは政治の世界に飛び込むための格好の「トランポリン」になっている。
この伝統が生まれたのは1994年1月26日、イタリアで一番の富豪がテレビで大々的に政界入りを表明したときだ。シルビオ・ベルルスコーニは「私はこの『フィールド』を選んだ」と言った。このフレーズが重要だった。
ACミランの会長であるベルルスコーニは、スポーツの言葉を意識的に取り込んでいた。彼は自分の政党を「フォルツァ・イタリア(がんばれ、イタリア)」と名づけた。フットボールのチャント(応援コール)からとった名前である。「ベルルスコーニの側近たちは長年にわたる調査の結果、イタリア人をひとつにできる言葉はフットボールに関係するものしかないという結論に達した」と、イタリア史の専門家ジョン・フットは解説する。
ベルルスコーニは八百長スキャンダルに揺れていたACミランを欧州チャンピオンにした。次に彼は「イタリアをACミランのようにする」と公約した。フットボールクラブを国のモデルにする──それは今まで、どんな政治哲学者も考えつかなかったことだ。
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