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【Jリーグ】FC町田ゼルビアにあの勝利の方程式が戻ってきた 堅守復活の中身とキーマンの存在 (5ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【試合数の多い8、9月が今後のカギ】

 公式戦7連勝を達成して、ようやく軌道に乗ってきた町田。それでも黒田監督はチームに緩んだ雰囲気を一切許さない。

「3連敗と2連敗をして、その負けをなんとか取り戻しただけの話。まだ借金はある。だから連勝というより、目の前の一戦にどれだけ力を注げるか。一戦必勝でやっていくしかない」

 目の前の一戦に集中し、より厳しい競争を選手たちに求めている。日本代表DFの望月は「危機感を持っている」という。

「(V・ファーレン長崎から増山)朝陽くんも入ってきて、ポジションの確約がある選手はいない。この中断期間で緩みそうなところを監督から厳しい声かけもあった。町田が目指しているのは、今の6位じゃなくてもっと上にある。だからこの連勝に満足せず、チームは成長することにベクトルが向いている」

 また、岡村はこの連勝を一度忘れたほうがいいという。

「チームは勝っていて、すごく雰囲気はいいと思う。この連勝は一度忘れて、また目の前の一試合、一試合、自分のやるべきことを全力でやるだけ」

 一度沈んで盛り返してきただけに、油断することなく、また積み上げていくことが大事だという。ここから町田は優勝争いにどう絡んでいくのか。まずは8月、9月をどう乗りきるかだろう。

 8月6日の天皇杯ラウンド16に勝利して、同27日に準々決勝が開催されるため、8月は7試合になる。4試合がホームで、アウェーも横浜と川崎のため、遠征がないのは幸いだが、猛暑のなかで7試合は相当にハードだ。

 9月は初出場のACLエリートが開幕する。対戦相手は8月15日の抽選会までわからない。どこと当たるにしても3週間で5試合(ACLは2試合)を戦うため、これもまたハードな日程である。

 今季の過酷な戦いに備え、町田は2チーム分の戦力を揃えてきた。また、サンフレッチェ広島のスタッフとしてACL経験がある有馬賢二コーチ、日本代表での指導経験が豊富な浜野征哉GKコーチを招聘し、体制も強化した。

 ACLはクラブとしては初めてだが、鹿島アントラーズで優勝経験のある昌子を筆頭にFW西村拓真、相馬、DF中山雄太、菊池など、個々で経験している選手は9人もいる。また、谷や藤尾は、アンダー世代含め、代表活動で海外遠征は慣れている。

 クラブとしてのノウハウはなくとも、個々での経験が豊富なことで、チーム自体は落ち着いて大会に入れるだろう。ACLは10月以降にもあるが、まずは8月、9月をどう乗りきり、その頃にリーグでどんなポジションにいるのか。

 第22節新潟戦のフラッシュインタビューで、相馬はこう宣言した。

「笑われるかもしれないけど、僕らは後期19連勝して、優勝を目指している」

 その連勝を5つまで積み上げた。タイトルを見据える町田にとって、勝負の夏が始まる。

著者プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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