【Jリーグ】復活の兆しが見えたマリノス 意を決したOB新監督のもと、浮上のカギは? (3ページ目)
潮目が変わり始めた横浜ダービー
大島監督が就任した直後は連戦でじっくりと時間をかけて練習できず、J1第15節延期分のFC東京戦で0-3、続く第22節の湘南戦で1-1のドローと勝ち点3には届かなかったものの、チームの空気は確実に変わっていく。結果が出ないことに対して"気持ち"で片づけがちだった前任者たちとは異なるアプローチに、選手たちも好感触を抱いていた。
明確に流れが変わったのは、やはり7月5日に行なわれたJ1第24節の横浜FC戦だろう。全てがうまくいったわけではないが、どんなに不格好でも横浜ダービーに勝ち切ったことで、自分たちの取り組みを肯定できるようになった。
以降はリーグ戦の間隔が空いたことで十分な練習を積むこともでき、7月20日に行なわれたJ1第24節の名古屋グランパス戦で3-0という会心の勝利を収めた。ようやく"選手全員がのびのびと躍動感を持ってプレーできる"マリノスらしさが、ピッチ上のパフォーマンスに戻ってきたようだった。
1得点1アシストで勝利に大きく貢献したヤン・マテウスも、「すばらしい試合で、しっかりと結果がついてきた。チームにとって良かった試合だったと思います」と、それまでとは見違えるような充実した表情で試合を振り返った。
「ピッチ上で何をすべきかチーム全体がわかっていて、チャンスをしっかりと仕留め、守備でも全員でハードワークできていました。日々やっていることが結果につながってよかったし、そういった姿勢をピッチ上で見せられたことで、自分たちの取り組みは間違っていないと感じられています」
前線から激しくプレッシャーをかけ、後ろの選手たちはディフェンスラインを高く保ち、全体のコンパクトな陣形を維持する。ボールポゼッションにはこだわらず、攻撃では常にゴールへ向かう縦へのプレーを意識し続ける。
7月上旬のある日の練習で、指揮官はこう言っていた。
「サッカーを(以前の形に)戻した云々と言われますけど、全てがそうではない。ゴールを決めるためには裏を取らなければいけないし、相手ゴールに迫らなきゃいけないのはサッカーの本質の部分だから、そこは絶対に忘れちゃいけない。だから、どのタイミング、どの時間帯、どういう奪い方というのをしっかりとチームで合わせようとしています。別に自陣からパスを10本、20本つないでゴールを決めたいわけではないんです」
ボールを保持して攻撃の時間を長くし、相手に攻め込まれる回数を減らすことが重要なのではない。大事なのは、いかに自分たちのチャンスやゴールの回数を増やせるかであり、そのための方法は極論を言えば何だっていい。かつてアンジェ・ポステコグルー監督が根付かせた"アタッキングフットボール"の原則や本質を、大島監督は"交通整理"によって再び呼び起こしたのである。
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