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【Jリーグ】今季J2の魅力的なクラブをサッカーマニア平畠啓史が語る 「中盤の3枚がやばい」チームは? (3ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu

【エンターテイメントを貫く】

 藤枝MYFCは現在13位で、得失点差もマイナスになっていますが、5月の後半くらいから面白くなってきたというか、エンターテイメント性が出てきています。右の川上エドオジョン智慧選手、左のシマブク・カズヨシ選手、このふたりの突破力がいいですね。ガンガン仕掛けていきますし、右サイドは3バックの久富良輔選手も前に出て、ここの崩しのところはすごく面白いです。

 シャドーの浅倉廉選手もキレが半端なくて、たぶんサッカーを初めて見た人でも「こいつすげえなって」感じると思います。ドリブルでもガンガン抜いていって、90分ずっとキレまくってるっていうか。別に怒ってるわけじゃないですよ(笑)。

 FWは千葉寛汰太選手が清水エスパルスに戻ってしまいましたが、松木駿之介選手がいる。シャドーの朝倉選手と中川風希選手と、この3人のトライアングルでボールが動いている時はエンターテイメントサッカーがずっと続いている感じです。もともと藤枝はそういうチームでしたが、2025年バージョンのエンターテイメント性が出てきたなと思っていますね。

 僕が藤枝を面白いなと感じるのは、そういうエンターテイメント性がぶわっと出まくる時があるからなんですよ。試合によっては全然出ない時もあるんですけど、それも人間っぽいなと。60%の時もあるけど120%の時もあるみたいなライブ感というか、「今日の藤枝はやばいな」みたいな時の面白さ、人間っぽさが僕はすごく好きですね。

 成績的にはこのあとどうなっていくかわかりませんが、見ていてハラハラドキドキするのは間違いない。今日はどんな藤枝が出てくるんだろうと思っていたら、前半と後半でもガラッと変わったりしますから。

 スタジアムに行く時って、そういうところを観に行ってるんじゃないかとも思うんですよね。綺麗な音を聞きたかったらCDを聞いたらいいわけで、ライブに行くのはその日にしかない曲だったり、ギターの弦が切れていたのを何とかしたとか、歌詞を間違えたけどパッションでなんとかしたとか、そういうのを聴きに行ってるわけじゃないですか。

 藤枝って本当に、その日にしかない藤枝が見られるんですよ。もちろん上位に行って昇格争いや優勝争いすることも大事だけど、お客さんにお金を払って見に来てもらう仕事だと考えたら、すごく大事なことをやってるんじゃないかなと思いますね。

 GKの北村海チディ選手は足元があって、ビルドアップに加わって前に出てくるから、たまにロングシュートをスコーンと入れられたりするんですけど、最初からそのリスクを承知でやっている。お客さんはお金を払って見に行くなかで、やっぱりプロの選手には目の前でリスク追ってほしいんじゃないかと思います。普段の生活でリスクは追えないですから。

 車を買いたいけど高いからやめておこう、仕事を変えたいけどいまの生活があるからやめておこうってなる人が、お金を払って試合を見に行く。それは、ピッチ上で選手たちが自分たちできないことをリスク取ってやっているところが見たいわけなんですよ。

 藤枝はまさしく、須藤大輔監督が言ってるとおりのエンターテイメントだなって。リスクと背中合わせだけど、それこそがエンターテイメントでしょっていう感じはしますね。

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【動画】平畠啓史のJ2前半戦総括・V・ファーレン長崎/藤枝MYFC編↓↓↓

著者プロフィール

  • 平畠啓史

    平畠啓史 (ひらはた・けいじ)

    1968年8月14日生まれ。大阪府出身。芸能界随一のサッカー通として知られ、サッカー愛溢れる語り口が人気で、多くのサッカー関連番組の出演中。平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 日本全国56人に会ってきた」(ヨシモトブックス)など、サッカー関連の著書も多い。

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