川崎フロンターレ・小林悠が大学時代、サッカー部の先輩に向かって「ちゃんと部活やれよ!」と言った理由 (3ページ目)
【サッカー人生が変わった瞬間】
1学年上のキャプテンだった高校の先輩からも「驚くと思うよ」とは言われていた。ただ、実際に見た現実は、想像していた世界とはあまりにかけ離れていた。
「だって、パチンコが当たっていたから遅れたとか言って、練習に来るんですよ。もう、僕からしてみたら意味がわからない。ふざけんなよって思いましたよ。
何にイライラしたかって、ボールを蹴ったら、みんなうまいんですよ。でも、高校で燃え尽きてしまったのか、とにかく真剣にサッカーをやる雰囲気じゃなかった。僕からしてみたら、うまいのに何でちゃんとサッカーしないのかがわからなかった」
1年生という立場を忘れて、3、4年生に向かって発していた。
「おい! ちゃんとやれよ!」
「あきらめの悪さ」は、ここで流されなかったところにある。ラクなほうに身を委ねるのでもなく、その環境に甘えるのでもなく、小林はあえて荒波に飛び込んだ。
オセロの駒を黒から白へと、ひとつずつひっくり返していくように、小林は訴え続けると、次第に周りも反応してくれるようになった。
「キャプテンを含めてサッカーに対して真面目に取り組んでいる選手たちが、自分たちでサッカー部をよくしていこうと変わっていって。そのタイミングで、コーチとして柱谷幸一さんが指導に来てくれるなど、徐々に雰囲気や環境も変わっていったんです。
1年生の時は、自分ひとりが躍起になっているだけでしたけど、徐々に同学年の選手も試合のメンバーに入るようになって、真剣にやっていない選手はメンバーから外れて、真面目に取り組んでいる選手が試合に出られる雰囲気に、自分たちで変えていったんです」
1年生だった2006年に、関東2部リーグながら新人王に選ばれた小林は、関東大学選抜や大学1・2年生選抜チームに選ばれるようになる。
「そこで一気にサッカー人生は変わりました」
プロになるために──選手としての意識は、より高まる契機になった。
「1・2年生の選抜チームで韓国遠征に行ったんですけど、2部リーグから選ばれたのは自分ともうひとりくらい。ほかは1部リーグの選手たちで、試合をしたこともないくらいでした。でも、そのなかに入って練習や試合をした時に、『敵わない』じゃなくて、『俺、全然やれるじゃん』って思えたんですよね」
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