どん底の横浜F・マリノスに見えた光明 首位を撃破した一戦が逆襲への分岐点となるか (2ページ目)
指揮官の言葉を借りれば、「ハイラインはこれまでも求めていた部分であり、他の試合でもやっていきたかったが、できているときと、できていないときがあった」。敗戦が続く苦しい状況では、選手たちの意識がどうしてもゴールを守ろうとする方向に傾き、DFラインが後退しがちになるのも無理はなかった。
だがこの日は、右サイドバックの加藤蓮いわく、「この前(4日前に行なわれたJ1第13節)のヴィッセル神戸戦も、すごくラインが低い状態での失点だったので、(相手の)FKのときも含めて全体的にラインを押し上げようと意識していた」。
最終ラインを高く設定することで、高い位置でコンパクトな陣形を保ち、前から相手にプレッシャーをかける。その戦い方が、鹿島に対して有効だったのはもちろんだが、連敗中で弱気になりかねない自らの士気を高めることにもつながっていたに違いない。
「もともと去年も(DFラインを高く保つ)アグレッシブラインを引いていたので、怖さはない。選手自身もみんな(やり方は)わかっている」(加藤)
「センターバックのラインコントロールがすばらしかった。僕ら(ボランチ)もただ引くだけでなく、(相手の出方を)うかがいながらけん制するのが大事だった」(山根陸)
とはいえ、首位を走るチームを相手に3点をリードした試合が、"出来すぎ"だったのも事実だろう。
数少ない攻撃機会のほとんどすべてを決定機につなげ、前半だけで3つものゴールを生み出す。そんな試合は、そうそうあるものではない。
実際、今季の横浜FMは、第12節の清水エスパルス戦で後半途中まで2点をリードしながら、そこから3点を失い、逆転負けを喫しているのである。
「(リードしてから)あそこで引いちゃいけないし、とにかく相手が嫌なことをやっていかないといけないなかで、後手に回ったとしても粘り強く守るところは徹底した」
そう振り返る山根が、「3点入ったのはデカかった。1-0のまま進んでいたら、またちょっとメンタル的にも違ったかなと思う」とも語るように、これから先、接戦を勝ちきっていけるかどうかにも、もう不安がないわけではない。
危機的状況にあるなか、ひとつの勝利に過度な期待を寄せるのは禁物だ。
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