検索

ヴィッセル神戸の新キャプテン・山川哲史の覚悟 「ご飯が喉を通らなかった」連覇達成の舞台裏を語る (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 出場した試合では、対人や空中戦の強さといった本来の持ち味に加え、副キャプテンを任された責任感も力にして、これまで以上に"声"が響いていたという印象もある。昨年のキャプテン、山口蛍(→V・ファーレン長崎)がケガで離脱していた時はキャプテンマークを預かることも多かった。

「昨年は、チームへの働きかけ、声がけをしながら勝利に貢献しようと、自分に(ノルマを)課してスタートしたシーズンでした。それは一昨年、継続的に試合に出してもらったのもあったし、僕もプロ5年目で、年上の選手たちに引っ張ってもらうだけではダメだという思いもありました。

 それもあって、チームに対しての声がけは増えましたけど、シーズンが終わってみれば、やっぱりベテラン選手の気迫、周りの士気を高める力、チームの炎をもっと大きくするような圧力に、引っ張ってもらうことが多かったな、と。そういう意味では、自分の力不足も感じたし、『彼らについていくばかりではなくて、中堅の僕たちも前に立ってチームを引っ張っていけるようになっていかなきゃいけない』と、リマインドしたところもありました」

 優勝をかけた最終節、湘南ベルマーレ戦でのパフォーマンスも印象的だった。この日もキャプテンマークを巻いてピッチに立った山川は、対人プレーを含めて終始鬼気迫るプレーでチームを鼓舞。本人曰く「この試合に限っては、納得のいくパフォーマンスができた」と振り返り、今シーズンを戦ううえでの「基準にしたい」とも言葉を続けた。

「試合までの1週間は、自分でもビビるくらい、めちゃめちゃ緊張していたんですけどね(笑)。一年を通して積み上げてきたものが、1試合で消え去ってしまうかもしれないとか、このクラブが背負う重みみたいなものを感じすぎてしまって......。勝手にいろんなことが頭に浮かんできて、ご飯がまったく喉を通らなかった。

 結果的に、試合当日は『これまでやってきたことを信じるだけや』って、吹っ切れたんですけど。もともとメンタルは、決して強くはないほうですが......まぁ、弱かったです(笑)。ただパフォーマンスとしては、相手FWにまったく仕事をさせなかったことからも、僕自身も満足のいく内容だったし、チームとしても90分間、全員の勝ちたい気持ちがピッチに漲っていて......それまでのどの試合とも違う気合いを感じ取っていました。

 あの試合で示した姿を、今シーズンの最低基準にしたいというか。試合が始まった瞬間から終了の笛が鳴るまで、全員で(力を)出しきって戦い抜く姿を、ヴィッセルの基準にしていきたい。そのために僕は、後ろからチームにパワーを与えられる存在になっていきたいと思っています」

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る