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ヴィッセル神戸の新キャプテン・山川哲史の覚悟 「ご飯が喉を通らなかった」連覇達成の舞台裏を語る (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 今シーズン、左腕に巻くキャプテンマークに誓うのは、年齢が上の選手と若い選手とをつなぐクッション材になること。知ってのとおり、ヴィッセルには大迫勇也、武藤嘉紀、酒井高徳、扇原貴宏ら、経験豊富な選手が顔を揃える。彼らの勝ちへの執着、"闘う"姿勢はもちろん、時に厳しい言葉で仲間を叱咤する姿が、近年のヴィッセルの強さを支えてきたのも紛れもない事実だ。

 だが、彼らに任せるだけではダメだと山川は言う。

「上の選手も若い選手も、それぞれの考えをぶつけ、お互いが高い要求をし合えてこそ、チームは強くなれる。もちろん、このチームは上の選手が放つ気迫や士気を高めてくれる力に引っ張られているところがまだまだ多いですけど、上の選手がかけてくれる厳しい言葉が若い選手の萎縮につながったり、プレーを小さくすることになってはもったいない。

 だからこそ、僕が間に入って、上の選手の言葉の裏にある真意を若い選手に伝えたり、逆に若い選手の考えを上の選手に伝えるなど、チーム全体を融合させるような役割を担っていきたいと考えています」

 それは、この先に待ち受ける厳しい連戦を逞しく乗り越えていくためでもある。

 2月8日に戦ったFUJIFILM SUPER CUPで幕を開けたヴィッセルの今シーズンだが、その3日後にはACLE第7節の上海海港戦を戦うなど、3月1日のJ1第4節のアビスパ福岡戦まで、この2月はいきなりの7連戦が予定されている。そうした状況下、すべての大会で"タイトル"を目指すには昨年同様、チームを挙げての総力戦が必至だ。

「昨年も後半戦は、特にACLEも始まって、移動も含めてかなり厳しい連戦でしたけど、そこでチャンスをつかんだ選手の勢いもチーム力にして、(第26節から第33節まで)6連勝を含む8戦負けなしと加速できた。ああいった姿を示せたのも、シーズンを通して普段の練習から高い競争力のなかでみんなが高め合っていたから。

 それと同じように今年も総力戦で臨むには、若い選手が常にチャレンジしやすい状況を作っておくこともすごく大事だと思っています。若い選手の活躍は、チームの勢いにも変わっていくはずだから」

(つづく)

山川哲史(やまかわ・てつし)
1997年10月1日生まれ。兵庫県出身。中学、高校とヴィッセル神戸のアカデミーに在籍し、筑波大学に進学。2020年に卒業後、ヴィッセル入り。入団当初はサイドバックを任されるが、2023シーズンからは本職のセンターバックで起用される。持ち前の高さと強さを生かしてレギュラーに定着。今季からキャプテンを務める。

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