闘莉王、大久保嘉人、ネイマール...元トップレフェリー西村雄一を成長させたレジェンド選手たち (2ページ目)
【選手の行動には必ず理由がある】
もっとも、大久保のプレーを見定めるのは、簡単ではないのである。大久保へパスが出る前から、彼がパスを受ける前から、DFとのポジション争いが繰り広げられているからだ。
「パスが出てから嘉人さんを見るのでは、タイミングが遅いのです。実はDFに何かをやられたから、やり返しているということもあるかもしれません。選手は理由もなしにファウルはしないので、何か起きたらその前を見落としているかもしれない、ということも考えます」
J1リーグで3年連続得点王となった川崎フロンターレ在籍時なら、パスの出し手となる中村憲剛らがボールを受けたあたりから、大久保の存在を意識した。その動きを視野にとらえた。
「動き出しのところで勝負している選手だと、嘉人さんや佐藤寿人さんには、かなり鍛えてもらいました。逆のパターンで、CBにも鍛えられました。たとえば、闘莉王さんや中澤佑二さんが相手のファウルをアピールしている時は、その前に何かあったのかなと。
選手の行動には、必ず理由があります。それを見られるか、ですね」
西村は国際主審としても活躍した。世界的なスーパースターとも、同じピッチに何度も立っている。
「外国籍選手は、レフェリーへのリスペクトを早い段階で身につけている選手が多い印象です。ですから、国際試合で悪態をつかれることはほぼありません。
たとえば、2012年のロンドン五輪でブラジルの試合を担当しました。チームには当時20歳のネイマール選手がいて、彼からゲーム中にとても自然な感じで『Thank you,Ref!』と言われました。上から目線で何かをアピールするようなことは、まったくなかったですね」
20年以上に及ぶレフェリーのキャリアで、心に刻まれた試合は数多い。
審判員も表彰されるカップ戦のファイナルも、国内外で経験している。そのなかから、西村は2011年3月の震災復興チャリティーマッチを挙げた。彼にとって、日本代表の試合で笛を吹いた唯一の試合である。
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