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伊東輝悦が32年間で「うまい」思った選手とは?「最初に見た時は『なんだこれっ』と思った」 (4ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【天才は引退後、何をするのか】

「最後に守る、最後に取るってところは、その人の感性というか直感というか、ホントにその人の能力だと思う。走るとか戦うとかはもちろん大事だし、試合運びのセオリーとかプレーの仕方とかを踏まえたうえで、ゴールを守る、取りきるというところで相手を上回る。そこは直感とか感覚が問われるんじゃないかな、と思う」

 21世紀のサッカーは、テクノロジーとともにある。チームも、選手も、データで語られることが多い。

「今はもう、パソコンのキーボードをポンと押すだけで、データが出てくるでしょ。おっそろしいよね」

 データは客観的な事実を示す。ただ、数字では割りきれないところに、サッカーの面白さが......。

「ある。俺はそう。時代遅れとか言われるかもしれないけど、でもやっぱり、そう思っている自分はいるんだよなあ」

 引退後に何をするのかは、まだ決めていない。

 最上位のライセンスまで取って、監督やコーチとして現場に携わるか。編成やスカウトも面白いんじゃないか、という気持ちもある。Jリーグのクラブで働くには、タイミングも重要だ。「何かしらサッカーに関わりたい」というのが、現時点で言える未来図だ。

「まあ、あまり慌てずに考えます」

 類まれなセンスの持ち主は、プロ入りとともに論理的思考を磨き、そのうえで感性の重要性に行き着いた──。史上最強とも言われる現在の日本代表に、絶頂期の伊東輝悦が加わったら、果たしてどうなるのか。空想の世界でも胸が躍る。

<了>


【profile】
伊東輝悦(いとう・てるよし)
1974年8月31日生まれ、静岡県清水市(現・静岡市清水区)出身。1993年、東海大学第一高校(現・東海大学付属翔洋高校)から清水エスパルスに入団。中盤の要として活躍し、2010年まで在籍する。その後、ヴァンフォーレ甲府、AC長野パルセイロ、ブラウブリッツ秋田と渡り歩き、2017年からアスルクラロ沼津でプレー。各世代の日本代表に選ばれ、1996年アトランタ五輪出場、1998年フランスW杯メンバーにも選出される。2024年10月に現役引退を発表し、32年間の選手生活にピリオドを打った。ポジション=MF。168cm、70kg。

著者プロフィール

  • 戸塚 啓

    戸塚 啓 (とつか・けい)

    スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本サッカー』(小学館)

【写真】伊東輝悦とも対戦した、あの人は今〜1994年Jリーグ得点王「オッツェ」今昔フォトギャラリー

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