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伊東輝悦が32年間で「うまい」思った選手とは?「最初に見た時は『なんだこれっ』と思った」 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【コパ・アメリカ伝説のドリブルシュート】

 清水で10番を背負った澤登も、直接FKの名手だった。スペシャルなキッカーにはそれ以前にも触れてきたが、日本代表で長く10番を背負うレフティは別格だった。

「ノボリさんもうまかったけど、俊輔はスピードが速い。曲がる。落ちる。射程距離が長い。プレーも当然うまいけど、あのキックの精度があるから、相手は簡単に蹴らせたくない。その逆をうまく取ってくるし、若い時はドリブルでシュワッと侵入してきたから、流れのなかでもとんでもない選手だった」

 伊東が「うまい」と話す選手たちには、ある共通点がある。伊東自身にも当てはまる優れた長所がある。相手の対応によってギリギリでパスコースや受け手を変えたり、プレーそのものを変えたりすることができるのだ。

「選択肢は多く持つようにしていて、プレーを変えられるけど、もっとうまく変えられたらいいなと思うんです。相手を見たり、味方を見たりして、判断を変えられるのは貴重というか、すばらしいと思うから。

 外から俯瞰で見ていれば、誰だって『こっちのほうがいい』と気づけるけど、ピッチのなかでもっとスムーズにプレーを変えられたら、もっとよかったなって思う。でも、それが難しい」

 優勝を争う強豪でも、残留がノルマのチームでも、どんなシステムでも、「プレーを変えられる」個人戦術は不可欠だ。サッカーがどれほど進化しても、「変えられる選手」はサバイブできる。

 1999年のコパ・アメリカで見せた伝説のドリブルシュートも、「変えた」結果だった。対ボリビア戦の後半終了間際、センターライン付近から持ち出すと、4人の選手をかわしてペナルティエリア手前まで運び、決定的なシュートを浴びせたのだった。

「ドリブルであそこまで持っていくのは、ひとつ目の選択肢じゃなかったんですよ。パスも考えていたんだけど、出すところがなかったので自分でいくか、という」

 プレーを「変えられる」のは先天的な才能なのか。生まれながらの感覚なのか。あるいは、後天的な学びで習得できるものなのか。

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