ヴィッセル神戸は来季Jリーグ3連覇できるか? 今季優勝をもぎ取った力を福田正博が分析 (3ページ目)
【昇降格チームに見るJ1残留で大切なこと】
来季J2に降格となったのは、18位ジュビロ磐田、19位北海道コンサドーレ札幌、20位サガン鳥栖。まず鳥栖については、「ここまでよく頑張った」というのが率直な思いだ。2012年からJ1を戦ってきたが、ここ数シーズンは開幕前と夏場に主力選手を次々と引き抜かれ、いつ降格してもおかしくない状況にあった。
それでも若い選手を起用しながら前半戦で勝ち点を積み重ね、後半戦はその貯金を使いながら降格を逃れてきたが、さすがに人材流出が響き、今季は前半戦で勝ち点を奪えずに残留に持ち込めなかった。現有戦力がどれくらいチームに残るか不透明だが、自前で育てた選手たちとともに再びJ1の舞台に戻ってきてもらいたい。
札幌は、開幕前に主力選手をごっそり引き抜かれ、シーズン序盤から故障者も続出し、前半戦で勝ち点を落としすぎたのが最後まで響いた。後半戦はケガ人の復帰や戦力補強で勝ち点を取り戻していただけに、シーズン序盤からもう少しメンバーが揃っていれば違った結果もあっただろう。
2018年から7シーズン、チームを率いたミハイロ・ペトロヴィッチ監督の退任も決まった。会見で「95%、監督のキャリアを終えるかもしれない」と、指導者引退を示唆していたが、2006年途中から監督就任した広島を皮切りに、浦和、札幌で見せた指導力を欲するクラブはあるはずだ。まだ67歳、本人をその気にさせることができるかどうか。もうしばらく"ミシャ"のサッカーをJリーグで見たいと思う。
磐田は昨季のJ2を2位で勝ち上がったが、今季は開幕前に移籍したMFドゥドゥ(ジェフユナイテッド千葉/現登録名エドゥアルド)の抜けた穴が痛かった。昨季、FWジャーメイン良、MF松本昌也と並んで9ゴールを挙げたチーム得点王が不在となり、代わりに獲得した外国籍選手が思ったような活躍ができなかったことで、昨季J2で3位のチーム総得点を稼いだ攻撃陣はJ1では最後まで鳴りを潜めたままだった。ジャーメインがJ1でも通用するところを見せただけに、「ドゥドゥがいたら......」となおさら思う。
J2からJ1に昇格するには、得点力の高いチームをつくることが最短距離だが、J1でその得点力が通じない時にチームが機能不全に陥る脆さがある。逆のパターンが東京Vだ。昨季J2での総得点はリーグ9番目だったが、総失点数はリーグ最少。堅守を武器にJ2で3位になって昇格プレーオフを勝ち上がると、今季のJ1ではその守備力をベースにして6位となった。
町田のように得点力・守備力ともに他を圧倒するチームをつくってJ1昇格ができればいいが、予算などの兼ね合いで全クラブがそれをできるわけではない。限られた予算のなかでJ2を勝ち抜くための得点力と、J1昇格後に残留するための守備力のバランスを取りながらチームづくりをし、長いリーグ戦を勝ち抜く。そうした難しさのあるJ2を、磐田、札幌、鳥栖は来季から戦うことになる。
そして、この3チームと入れ替わりで来季は、J2で1位となった清水エスパルス、2位の横浜FCと、5位から昇格プレーオフを勝ち上がったファジアーノ岡山がJ1に昇格する。このオフの戦力補強次第のところもあるが、この3チームが来季のJ1をどう戦うのかは興味深い。
著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。
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