鹿島アントラーズvsサンフレッチェ広島が魅力的な攻防を展開 古豪同士の対決はなぜ人々の心を打つのか (3ページ目)
【先人たちが積み重ねてきた様々な蓄積や記憶がある】
そうした優勝争いに関する興味はともかく、鹿島対広島の対戦は互いに技術の高さと戦術的な駆け引き(広島では川辺の起用法。鹿島なら試合途中でのシステム変更)など、非常に面白い試合だった。そして何よりも、両チームの選手たちの勝利を求める気持ちの強さもひしひしと伝わってきた。
まるでミドル級ボクサー同士の撃ち合いのような重量感を感じさせる試合だった。
こうした重量感のある戦いとなった理由は、両チームの戦力や現在置かれた状況によるのももちろんだが、もう一つ、この試合がオリジナル10の古豪同士の戦いだったこともあるかもしれない。
この日の広島の引き分けによって再び首位に浮上したFC町田ゼルビアは、今シーズンが初めてのJ1挑戦という"新興勢力"だ。だが、鹿島と広島はJリーグ発足当時からの強豪だった。
1993年に開幕したJリーグでは、スター軍団のヴェルディ川崎(現、東京ヴェルディ)が絶対王者的な存在であり、最初のシーズンにチャンピオンシップ(1シーズン2ステージ制で各優勝チームが年間王者を争った)でそのV川崎に挑戦したのが鹿島であり、2年目のシーズンの挑戦者が広島だった。
もちろん、30年前とは選手も監督もクラブ役員やスタッフもほぼ全員が入れ替わってはいるが、たとえば、常にタイトルを追い求めてきた鹿島の伝統は若い選手たちにも、また、今シーズンからチームを率いるセルビア人のランコ・ポポヴィッチ監督にも伝わっている。
そうした、先人たちが積み重ねてきた様々な蓄積や記憶があるからこそ、伝統あるチーム同士の対決は人々の心を打つのだろう。
3 / 4