38歳・丹羽大輝と家長昭博の今、そして今後...「サッカーをわかった、という感覚にはいつまで経ってもなれない」 (4ページ目)

  • 高村美砂●取材・構成 text&photo by Takamura Misa

家長 その危機感があるから、やれているのかもしらんな。

丹羽 そうね。こうして日本でのオフシーズンを過ごしている間も、実はめっちゃ不安やし。来週から始まるチームのキャンプに向けて当然、体の準備はしているけど、やってもやっても足りているかわからん。

家長 大丈夫。それは、ちゃんとピッチでのプレーに表われるから。

丹羽 ホンマに? そう言われるだけで安心するわ(笑)。

――前編では、NGPでの活動を通して、子どもたちの未来に希望を与えるきっかけになれば、というお話がありました。今後、ご自身はひとりのサッカープレーヤーとしてどういう希望を与えていきたいと思いますか。

丹羽 僕は年齢に関係なく、チャレンジすることの大切さを自分の姿を通して伝えていければなと思っています。そのためには、言葉ではなくピッチの上でのプレーで自分を示し続けることがひとつだと思うので、まずはその姿勢を見せ続けていきたいです。

家長 自分に伝えられることはほとんどないと思うので、僕自身がどういう姿を見せたいっていうのはないです。でも、これまでの自分の経験をもとにした子どもたちへのメッセージということで話をするなら、自分がやりたいことをやれる人になってもらいたいなって思っています。

 大人になったらわかるんですけど、意外とやりたいことをやるって難しいことで......。そもそも見つけられないかもしれないし、環境的にできないこともあるかもしれない。でも、それもたくさんの選択肢のひとつであることを忘れないでほしいというか。やりたいことをやれなくても人生が終わるわけではないし、やれないことによって、やれることが出てくるかもしれない。

 もっと言えば、仮にやりたいことがなくても不安を持つ必要もない。だって、それって人生で一番大事なことではないから。僕が一番大事だと思うのは、健康に生きること。それができていて、楽しいと思えることがあったら、それでいい。

丹羽 やりたいことは、サッカーである必要はない、と。

家長 そうそう。なんならスポーツである必要もないし、家族と話すとか、恋愛を楽しむ、でもいい。前編でも話したように、なんでも答えを決める必要はなく、「いつか夢中になれるものが見つかったらラッキー」くらいの感覚で元気に、楽しく過ごしてほしいなって思う。

 実際、僕も丹羽ちゃんも、そんなプロ、プロと思ってサッカーをやっていたわけではなく、楽しいと思うことを積み重ねてきた先に、たまたまプロの道が拓けただけじゃない?

丹羽 確かに、特に僕は特別な才能があるわけでもなかったし、サッカーが好きで、サッカーをするのが楽しくて、もっと巧くなりたい、これができるようになりたいって、目の前の練習をただただ一生懸命やってきて、気がついたらこの年齢になっていた感じやからね。

家長 僕らがこうしてサッカーを今もやれているのもある意味、偶然やしな。もし、目の前にあるのが野球だったら、野球にのめり込んでいたかもしらんしさ。見方を変えれば、生まれ育った環境が自分をサッカーにハメてくれたのかもしれない。そう考えると......改めて今回のNGPの活動を通して、自分が育った長岡京市で子どもたちと一緒にサッカーができでよかったなって思う。声を掛けてくれた丹羽ちゃんに感謝です。

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