ガンバひと筋だった藤春廣輝がJ3のFC琉球へ「とにかくサッカーをしたい。カテゴリーはまったく気にならなかった」 (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 リードしたままアディショナルタイムに突入してからは......実はそのくらいからすでにウルッときていました。試合後も、琉球にとって大きな意味を持つ試合に勝てた喜びとか、ガンバのユニフォームを着て戦っている元チームメイトへの羨ましさとか、いろんな感情に襲われて自然と泣けてきた。

 もしかしたら、ガンバと対戦できるのは最後かもなって思いがあったからかも。最近、やたらと涙脆い。歳をとったからかな」

 思えば、ガンバでのラストマッチとなった昨年のJ1最終節も、85分にピッチに立った時から目を潤ませ、試合後には泣きじゃくっていたが、今回のそれはまた違う意味を持つ、特別な涙になった。

「琉球は間違いなくこれからのチーム。こういう注目の一戦に勝つことは、チームや選手の自信になるし、沖縄の人たちに琉球を知ってもらうきっかけにもなる。『J1のチームに勝てるくらいすごいんや』と思ってもらえたら、今は2000人くらいの観客数を2500人、3000人と増やせるかもしれない。

 その数が増えていくことは間違いなく選手のモチベーションにもつながるし、それはチームが強くなることともイコールですしね。ふだんから、チームメイトにはそういう話もしてきたとはいえ、選手自身がそれを体感するのが一番だと思うので、ガンバ戦の勝利は琉球にとってすごく大きかったし、素直にうれしかった」

 藤春が琉球への加入を決めたのは、昨シーズンの戦いが終わった直後のことだった。

「たとえば、走れなくなるとか、思うようなプレーができなくなるというように、自分が(引退を)納得できる理由ができるまではサッカーをやりたいという思いが強かったので、引退はまったく考えなかった」

 カテゴリーや条件よりも、最初にオファーを出してくれたクラブに対する感謝の思いを貫いたという。

「思えば、大学からガンバに入るときも『一番にオファーをくれた』ということを優先したんです。正直、他のチームからも練習参加を含めて声は掛けてもらっていたけど、全部断っていました。それと同じで、今回も最初にオファーをくれたチームに行こう、と。自分としてはとにかくサッカーをしたい、試合を戦いたいって思いしかなかったので、カテゴリーはまったく気にならなかったです。

 契約満了になることが決まったあと、いろんな人が連絡をくれたんですけど、元チームメイトのニワちゃん(丹羽大輝/アレナス・クルブ・デ・ゲチョ)にもらった『カテゴリーうんぬんより、自分を一番必要としてくれるチームに行ったほうがいい』ってアドバイスもすごく腑に落ちました。あとは、冷え性だから寒くない場所ってことにも惹かれたかも(笑)」

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