欧州のサッカーデータサイト「トランスファーマルクト」のスタッフが注目する次に来る日本人選手は? (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【欧州でプレーしないと評価額が上がらない】

――久保は現在、6000万ユーロと日本人最高の評価額になっています。実はこれに関連することで、個人的に訊きたいことがありまして。今年のアジアカップのグループステージで、日本はイラクに1-2で敗れました。この時、私は初めてイラクのFWアイメン・フセイン――2得点を決めたストライカー――を観たのですが、いつもの習性ですぐにトランスファーマルクトを開いて彼のプロフィールを見たら、評価額はたったの45万ユーロでした(現在は60万ユーロ)。つまり久保の評価額の100分の1以下だったわけですが、少なくともあの試合では同じピッチに立っていた久保よりも、はるかにフセインのほうが優れていました。やはり、イラクの選手は評価が難しいのでしょうか。

ティベリウス アイメン・フセインは私も大好きな選手です。アジアカップの活躍は鮮烈でしたね。ただおっしゃる通り、彼は評価するのが非常に難しい選手です。なぜなら、彼はイラクの国内リーグでプレーしている。それは情報が得にくいリーグで、トランスファーマルクトもまだカバーできていない。だから基準がほとんどない。

 彼はこれまでにチュニジアやカタール、UAE、モロッコでもプレーしていますが、直近となる昨夏のラジャ・カサブランカへの移籍はうまくいかず、2カ月と経たないうちに母国の古巣アル・クワ・アル・ジャウィヤに戻ってきている。もしかしたら、ちょっと内弁慶なところがあるのかもしれませんが、帰国してからはゴールを量産しています。

 そしてイラク代表は、2022年11月にヘスス・カサス監督が率いるようになってから、格段にいいチームになっています。2023年には、サウジアラビアやカタールなどを破ってガルフカップで優勝。それでも、アジアカップでのフセインの大活躍――4試合で6得点――は、予想以上でした。私たちの評価額の低さを弁明するわけではありませんが。

――欧州でプレーするか、欧州人選手がいるリーグでプレーしていないと、基準の設定が難しく、なかなか評価額が上がらないということなのですね。

トビアス 今のところ、それは否めない。ただ一方で、こんなケースもある。昨シーズンの日本の東北2部リーグ南(6部リーグに相当)の得点王になったガーナ人FWマクスウェル・アンサ(みちのく仙台FC)という選手が、私たちのX(旧Twitter)に直接連絡してきて、自身の評価額を修正してほしいと言ってきたんだ。残念ながら、我々は基本的に3部リーグ以上の選手にしか市場価値をつけないんだけど、そうした選手にとっても、うちの評価が重要視されていることがわかった。

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