松井大輔はセカンドキャリアも独自の道を歩む「ドリブルは理論も合わせて伝えるのが育成世代には大事」 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【下の世代を育てるスペシャリストを目指したい】

── ドリブルの技術だけでなく、理論を教えてもらえるのは新鮮ですね。

「自分がこれまで培ってきたテクニックや感覚だけでは、教えられるほうもよくわからないままになってしまうかもしれませんが、僕としてはそこにしっかりとした理論を合わせて伝えることが、育成年代を指導する時にすごく大事だと考えています。

 たとえば、三笘(薫)くんのドリブルはなぜあれほど相手を抜けるのかとか、(リオネル・)メッシのドリブルはどうやっているのかとか、フットサルの反発ドリブルのこともテクニックと一緒に言葉でも伝えるようにしています。そのために、僕自身もいろいろな選手のドリブルを研究していて、今後はそれらをひとつのメソッドにしていきたいと考えています。

この記事に関連する写真を見る 言葉だけではわかりにくいかもしれないので具体的な例を挙げると、一流選手に共通しているのは、重心がどちらにあるのかが相手にわからないようにするために、片方の足でステップを細かく2回踏むんです。

 ステップが1回だとどっちに抜こうとしているのか相手にバレやすいんですが、2回踏むとどっちに行くのかわかりにくい。面白いのは、メッシだけでなくて、テニスの(ノバク・)ジョコヴィッチも、卓球のトッププレーヤーも、同じようにステップを2回踏んでいるんです。

 ドリブルがうまくなるためには、そんな細かい技術や理論が大事になるので、今後はそういった指導方法を突き詰めていくつもりです」

── トップチームの監督ではなく、今後も育成年代を指導していく予定ですか?

「そうですね。横浜FCの話をいただいた時も、ただ引き受けるのではなく、子どもたちにこういうことを教えたいという話をしたうえで、ぜひお願いしますと言ってもらいました。

 これまでは、ほとんどの指導者が最終的にトップチームの監督を目指すのが一般的な流れですが、僕は下の世代を育てるスペシャリストを目指したいと思っていて。特に3歳から12歳は一番大事な時期ですし、まだ癖もついていない。そんな子どもたちにそれなりのプロキャリアを経験した自分が本腰を入れて指導したら、子どもたちの指導にも新しい流れができるかもしれないんじゃないかなって。

 ジュニアマイスターじゃないですが、日本にはフランスみたいに育成のスペシャリストが圧倒的に不足していますし、育成のスペシャリストの地位が低いように感じます。一流選手を育てるにはそこが一番大事なところなのに、それがないのが悔しいというか、何とかしなければいけないと思うんです。それによって、日本サッカーのレベルを上げていけたらいいなって思っています」

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