常勝軍団復活へ 鹿島はなぜポポヴィッチを呼んだのか? 強化部長が明かす、選手強化のビジョンと課題 (3ページ目)

  • 木村元彦●文・取材 text by Yukihiko Kimura

―チャヴリッチは、旧ユーゴスラビアの時代から、ボラ・ミルティノビッチ、スロボダン、サントラツなど、多くのファンタジスタを輩出したOFKベオグラードの育成システムで育ち、2013年にU19欧州選手権でセルビアが優勝したときのメンバーです。来日前にサポーターに軟禁状態にされたこともあって、キャンプに参加できず、まだポテンシャルを発揮しきれていない印象ですが、現段階での評価はいかがでしょう。

「日本のサッカーのテンポの速さに苦しんでいます。そのなかでもあれだけのパフォーマンスを出してくれています。彼は点が取れるのにエゴイストじゃないし、ポポさんのサッカーをわかっている。組織のなかで個が輝くということを体現しています。

 うちのチームは去年から、ビルドアップのテンポ、攻撃の迫力、3人目の動きというものが現状の課題でした。そこはポポさんも取り組んでくれていて、3人目の動きを出せるタイミングはまだ少ないですが、ジュビロ(磐田)戦の開始直後にチャッキーがシュートしたシーンなどはいろんな選手が関わってくれていました。負けてしまいましたが、(サガン)鳥栖戦の濃野(公人)もパスを出したあとに留まるのではなく、プレーに関わり続けて、それが最終的に3人目の動きに繋がりました。

 そこは組織として、メンバーが変わってもできるような落とし込みを練習で常にやっています。まだ最後のシュート精度やタイミングのズレはありますが、そこは伸びしろですね。ハマっていけば、これが鹿島のサッカーだとなっていくと思います」

―そこは吉岡FDが狙っていたものですか。

「仰るとおりです。得点できなくても、そこのリスクマネージメントはやってくれる監督なので、奪い返して二次攻撃に繋げる。リスクは冒しても守備はおろそかにしない。サイドバックの濃野が毎回前線まで上がって点が取れているのも、その証左です。まだまだ課題は多いですが、方向性について間違うことなく導いてくれていると思います」

―サポーターの関心事として、吉岡さんにこれもお聞きしたい。ウインドウの問題はありますが、今後の補強のビジョンを教えてもらえますか。

「話はさかのぼりますが、ポポさんが就任したときに『まず鹿島の選手を見てほしい』と伝えました。監督が戦力を実際に見たうえでどのポジションを補強すべきか、話し合っていこうと編成がスタートしました。そこをしっかりと共有して編成しないと獲得しても選手が出場できないことになりますから、そこは慎重になりました。

 外国人で言えば、CBのチャルシッチがメディカルチェックでNGになったときにポポさんも多くの選手を見ました。正直、これは取りたいと思う選手もいました。しかし、金額面で多くの要求をされました。ポポさんはそれについて、『そんな上積みをすることはない、クラブには適正な金額で選手を獲得してほしいから、そういう要求をしてくる選手は断ってほしい』と言ったんです。それで、こちらから破断にしたケースもあります。

 ただ納得する選手が獲得できなかったのは、僕も反省する必要があると思っています。CBの補強などについては日々話し合っていますので、そこは夏のウインドウで動こうと思っています」

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