J1通算100得点――エゴイストではない点取り屋・渡邉千真の気概「自分で限界を作りたくない」

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

ベテランプレーヤーの矜持
~彼らが「現役」にこだわるワケ
第2回:渡邉千真(SHIBUYA CITY FC)/後編

「点を取る」という自らの価値を追求し続ける渡邉千真。写真提供:SHIBUYA CITY FC「点を取る」という自らの価値を追求し続ける渡邉千真。写真提供:SHIBUYA CITY FCこの記事に関連する写真を見る

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 Jリーグ史上15人目となる『J1通算100得点』を挙げるなど、得点を重ねることでプロサッカー選手としての価値を示してきた渡邉千真だが、特筆すべきは彼が"点取り屋"でありながらも、決してエゴイストではなかったことだろう。彼の言葉にもあるとおり、FWとして点を取りたい、取らなければいけないという意識を強く持ち合わせてきたことに嘘はない。だが、同時に「周りに(点を)取らせることも考えてきた」のも事実だ。

「学生時代も含めて、常に点を取りたいとは思っていたけど、それはあくまでFWの役割として、というか。チームのなかで自分に求められる仕事を心掛けてきた結果、たくさんのゴールを刻むことができた。

 でも、いつもいつも『自分が取らなきゃ』とか、『俺にボールを寄越せ』とは思っていなかったというか。FW(のポジション)を預かることが多かったし、シュートが得意だと自負していたから、自然と点を取ることに気持ちが寄っていたけど、根本的にサッカーはひとりでするものではないと思っていたからこそ、そこまでエゴイスティックに点を取ることばかりを考えてきたわけでもなかった」

 その言葉を象徴するシーズンが、ヴィッセル神戸での2016年だ。シュートレンジの広さを武器に、前年度も3トップの真ん中や、2トップの一角はもちろん、サイドMFとして機能しながら10得点を挙げた渡邉はこの年、開幕から左サイドMFでプレー。キャリア初のキャプテンという責任にも背中を押されながら、チームの勝利を第一に据えた献身性を示して攻撃を加速させる。2トップのレアンドロ、ペドロ・ジュニオールとの連係もよく、レアンドロの"得点王"を後押しするだけではなく、自身も33試合出場12得点と活躍した。

「いろんな指導者の方にお世話になりましたけど、神戸時代のネルシーニョ監督の影響はすごく大きかったです。最初にサイドハーフを任された時は戸惑いもあったけど、求められることにトライし続けていくうちにプレーの幅が広がっていく気がした。当時は守備もして、"(パスを)出す"仕事もして、点も取って......と、今となっては考えられないくらいいろんな仕事をしていましたけど、それらが全部リンクして自分を勢いづけている感覚もあった。

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