鎌田大地はJリーグが生んだ傑作 渡欧前からポテンシャルの高さは明らかだった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【当たってもびくともしない】

<時間を操り、空間を作る>

 鎌田は一流選手だけが持つそんな能力に恵まれていた。ボールの置きどころをわずかに変えるだけでプレーの選択肢を増やし、最善の判断で有効性を高められる。快刀乱麻というべきか、ボールを持ったとき、彼を中心に時間はまわり、必然的に"地の利"を得る。

 続く川崎フロンターレ戦でも、鎌田は途中出場ながら得点をアシストしたが、それ以外でも、必ずと言っていいほど最善の判断を下していた。パサーという限定能力ではない。シュートを打つべき時はシュートを選択し、実際に精度の高いシュートを打ち込む。実は守備センスにも優れ、相手の間合いが読み取れるから、奪いどころを心得ていた。

 キックひとつをとっても、素質の非凡さは歴然としていた。どのように足をボールに当てれば強く飛び、回転がかかるのか、すでに習得していた。結果、FKも含めて出力最大の一撃を打ち込めた。

 同年8月のモンテディオ山形戦では目の前のディフェンダーの裏を取り、シュートもGKの逆を取ったコースに流し込んでいる。目の前のマークを外すセンスは天分。どこがゴールを奪うポイントか、というタイミングで相手を上回れるのだ。

「当たってもびくともしなかった」

 当時、多くの対戦選手が10代の選手の強さに圧倒され、天才にありがちなひ弱さもなかった。

 プレーメイクだけでなく、守備でリズムを作る強度を装備し、ゴールにも絡む。サッカー選手としてオールラウンドなスケール感だった。それは、「過去10年でJリーグ最高の選手」と評しても過言ではない。

 ではなぜ、これだけの素材がユース年代では一度も代表に選ばれず、日本サッカー界で隠れていたのか。

「試合中、消えている時間が長い」「性格的に暗い」「何を考えているかわからない」......そんなマイナスポイントが理由で、スカウト網から外れていたという。だが、"消えているプレー"を反転させ、"現れているプレー"と接続させたら、化け物級のタレントだったわけだ。

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