高校サッカーで近江が独自のスタイルをアピール! 青森山田には完敗も「歴史を作った」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 シュート数は青森山田の10本に対し、近江はわずかに2本。スコア以上に力の差があったと言ってもいいのかもしれない。

 実際、青森山田のMF芝田玲は、近江について「少し特殊なサッカーをしてくる」と評したうえで、こんなことを話している。

「(高円宮杯U-18)プレミアリーグを通じて、いろんなチームとやってきた経験が選手権では生きるというのは、チームみんなが思っていたこと。正直、自分たちが1年間苦手としていたのは、縦に速い、フィジカルを生かしたサッカーだったので、最後(に対戦した近江)は少し分のいい(タイプの)相手と言ったらおかしいが、そういう相手だったので、自分たちを信じて強度を全面に押し出した試合ができた」

 同じく青森山田のDF小泉佳絃も、近江に対して「前線で(プレスが)はがされることは想定内。最後は自分がゴール前にいることを意識した」と言い、こう続ける。

「プレミアリーグを戦ってきたなかで、昌平や前橋育英のように、後ろからつないできて、ドリブルの個ではがしてくるチーム(との対戦)は、自分たちもすごく得意としていた。そこは(決勝の相手が)近江ということで、自分も試合前に結構自信はあったし、縦に速い飯塚みたいなチームのほうが嫌だったので、ちょっとラッキーというか(苦笑)、よかったなと思う」

 広いピッチを小さく分割し、一つひとつの局面に人数をかけることで、勝機を見出そうとした近江。しかしながら、「局面、局面で勝てる部分はあっても、その次の対応が(青森山田は)すごく早かったので、崩しきれない部分があった」とは、近江のMF山門立侑の弁だ。

 山門が続ける。

「(青森山田の選手は)すごく経験を踏んでいるからか、みんな冷静で全然焦っている様子がなかった。(近江が同点に)追いついた時も変わらなくて、自分たちがちょっと攻めてゴール前まで行っても、全然大丈夫みたいな感じだったので、やりにくかった」

 勢いに乗る近江も、最後は絶対王者に力の差を見せつけられたと言ってもいいのかもしれない。率直に言って、近江の完敗である。

 とはいえ、今大会を通じて近江が残したインパクトは、ひとつの敗戦によって弱まるほど小さなものではなかった。

「(決勝で負けたのは)悔しいけど、今までは2回戦敗退だったなかで、準優勝という輝かしい成績を残すことができたので、一個歴史を作ったっていうか、近江のサッカーっていうのはこういうもんやぞっていうのを、全国の人たちに見せられたんじゃないかなと思う」

 西村がそう語っていたように、近江独自のスタイル――ピッチ上のどこからでも仕掛けられるドリブルと、それを合図に動き始めるパスワーク――は、間違いなくサッカーファンに広く知られるところとなったはずだ。

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