イニエスタの獲得、元日本代表選手の結集 Jリーグ初優勝のヴィッセル神戸の取り組みに福田正博は「今後の指針になる」 (2ページ目)
【神戸の取り組みは今後の他チームの指針になった】
イニエスタについても触れておきたい。7月頭で神戸を退団し、優勝シーンにイニエスタはいなかったことで、「大物助っ人を加えたところでチームは強くならない」と揶揄する声もある。
確かに大迫や武藤などの元日本代表組を集結させたことが優勝の原動力になったのは間違いないが、彼らが神戸加入を決断したのは神戸にイニエスタがいたからというのを忘れてはならないだろう。
2018年にイニエスタを獲得し、翌年にはダビド・ビジャを加え、ルーカス・ポドルスキとのトリオで、神戸の目指すJ1優勝やアジア制覇が口だけのものではないと示した。結果的に彼らが在籍した期間にそれは叶わなかったが、クラブの本気度は多くの人たちが知るところとなった。
クラブが変わろうとする姿勢は、言葉で表すのは簡単だが、人を信じさせるには行動しなければならない。その点において神戸のイニエスタ獲得には意義があった。
Jリーグの人気面でも大きく貢献してくれた。イニエスタが神戸に加わってからの神戸戦の観客動員を見れば一目瞭然だが、すべてのJ1クラブが恩恵を受けている。イニエスタがいた約6シーズンで、スーパースターがいても優勝争いをする難しさを多くの人たちが理解したが、だからと言ってスーパースターは不要と結論づけるのは短絡的だろう。
若手選手の海外移籍が加速するJリーグにおいて、スタジアムに足を運んで「生でプレーが観たい」と思わせるスーパースターの獲得は、これからもJリーグにとっては必要不可欠なもの。今後はそうした選手を獲得したうえで、優勝争いのできるチームが現れてくれることを期待している。
神戸の取り組みでもうひとつ、今後のJリーグの指針になるものがあった。それが海外リーグでプレーした日本人選手の受け皿となり、彼らの力を優勝への原動力にする形だ。
選手というのは、キャリアを有終の美で飾りたいと思うもの。優勝を狙えるクラブで最後の一花を咲かせたい彼らの気持ちを最大限に活かすチームづくりは、J1での成功を狙うクラブにはお手本となるはずだ。
もちろん、一人二人を加えたところで、スーパースター獲得と同じでチーム力は大きく変わったりはしないが、彼らの力の猶予は1年限りではないため、こうした形でのチームづくりに成功すれば3、4年は安定した成績が残せるのではと思う。
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