日本サッカーは勤勉ではなかった! Jリーグとハーランドのデータに驚きの差 (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【Jリーグは動きが少ない】

 そうした背景を考慮しても、この数字は注目に値する。一般的に、日本人選手や日本のチームの選手は「勤勉」と捉えられているが、この数値の違いが示すのは、動きの少なさだ。

 しかも相手はシーズン開幕前の状態で、日本の猛暑にも慣れていなかった。やはりトップ中のトップレベルの選手たちは、走力をはじめフィジカルの能力が格段に優れている。

 もうひとつの川崎対バイエルン戦のレポート(東京大学ア式蹴球部の3人による)でも、やはり裏抜けの数の差が取り上げられていた──90分換算で「川崎の114に対し、バイエルンは160だった」と。

 またここでは、プレス時の加速の回数や、プレス数とコンタクト比率、コンタクト数と守備成功率も明示され、いずれもバイエルンが勝っていた。これが意味するのは、守備の際に相手に寄せきって球を奪うことが良しとされる欧州と、相手を見ながら味方の戻りを待って危険を遅らせることもひとつの守備の方法と信じられている日本の違いだ。

 それはフットボールカルチャーの相違と言えるだろう。極東の島国では、多くのものが独自に発展し、時に「ガラパゴス化」と揶揄されることもあるように、このスポーツに関しても、ある意味でユニークな進化を遂げてきたところがある。

 チャンスにシュートよりパスを選択する選手が少なからずいたり、股抜きのような曲芸的なスキルに歓声が上がったり、旧態依然とした悪しき伝統がいまだにこびりついていたり......。

 近年では欧州で本場のフットボールに直接触れている選手たちが、それを日本に還元しようとする行動が顕著に見られるが、まだJリーグと欧州リーグのトップチームの間には、さまざまな差が顕在している。

 今回のテクニカルレポートで炙り出された数値を、どう解釈し、どう活かしていくのか。真のトップレベルに追いつくには、フィジカルの向上や戦術の発展も必要に違いないが、個人的には、やはりカルチャー、つまり全体的な考え方やムードの進展も欠かせないと思う。

著者プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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