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日本サッカーは勤勉ではなかった! Jリーグとハーランドのデータに驚きの差 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【ハーランドの圧倒的な裏抜け回数】

 ポゼッション時のアクションで顕著な差が見られたのは、「裏抜け」の数。実際、この試合では横浜FMの44回に対し、シティのそれは82回と、およそ倍だった。

 選手別のランキングも表示され、シティの上位はアーリング・ハーランド(出場45分で21回)、ベルナルド・シウバ(出場30分で11回)、セルヒオ・ゴメス(出場45分で8回)で、横浜FMの上位はエウベル(出場73分で7回)、アンデルソン・ロペス(出場73分で7回)、永戸勝也(出場90分で7回)だった。

「ハーランドの21回は特筆に値する数字だ」と松野氏は書く。「2023シーズンのJ1リーグ2〜7月における1試合あたりの個人トップが29回なので、90分換算すると42回となるハーランドの数字がいかに突出しているかが理解できる」

 それ以外にも、インサイドハーフやサイドバック、ウイングなど、あらゆるポジションの選手たちが敵の最終ラインを何度も突き、しかも相手ボックス内に侵入していることが多い。

 確かにシティをはじめ、欧州のトップチームの試合を見ていると、チャンスの時に敵陣ペナルティエリアに多くの選手が入っているシーンを頻繁に見る。走力や持久力を高度に備えていることはもちろん、走り込むタイミングを日頃の練習から叩き込まれているのだろう。

 ジョゼップ・グアルディオラのチームといえば、ショートパスの連続を思い浮かべるひとも多いはずだが、実際は在籍する選手の特性に合わせて戦い方を自在に変える。そして、現在のシティはフットボール史上最強との呼び声も高い、オールマイティーなチームだ。

 ポゼッションをベースとしながらも、逆襲が有効な相手には引いて守って長いフィードをシンプルに前線に送り、ハーランドやケビン・デ・ブライネという特別なクオリティーを持つアタッカーに攻撃を託すこともある──昨季のプレミアリーグの大一番、ホームでのアーセナル戦のように。

 近年は一線級のタフな守備者を集めたうえで彼らのボールスキルをさらに高め、センターバックだけでなく、サイドバックやセントラルMFとしても起用できるようにし、試合中のポジションチェンジによって相手の虚を突いていく。

 また前線にもハーランドやフリアン・アルバレスのように、技術やスピードだけでなく、フィジカルに長じる選手を獲得している。

 つまりグアルディオラは技術だけでなく、すべての側面を重視しているのだ。当たり前といえばそのとおりだが、彼が指導キャリアの初期に築いた黄金時代のバルセロナとは、やや趣が異なる。

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