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横浜F・マリノスに見る日本サッカーの構造問題 頂上決戦で右肩下がりが明らかに (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【混沌状態のJリーグ】

 有能な外国人選手を獲得できるなら話は簡単だ。しかし、世の中は空前の円安である。外国人選手には、購買意欲が失せるような半端ない値がつけられている。Jリーグにクオリティの高い外国人選手が減った理由である。外国人枠を満たすことができないクラブが大半を占める現状に、日本の悲哀が見て取れる。 

 神戸で今季20点を奪い、得点王争いのトップに立つ大迫勇也は欧州からの出戻り組だ。この日、ダメ押しとなる追加点をヘディングで奪った武藤嘉紀もしかり。酒井高徳や、ケガで戦線離脱した齊藤未月もそのひとり。毎年、何人か存在するであろう、欧州からの出戻り選手をいかに捕まえるか。これこそが強化のポイントかもしれない。

 神戸の話を続ければ、今季このまま逃げ切り優勝を飾ることができても、来季は苦戦が待ち受けているだろう。川崎、横浜FMの現在がそれを物語っている。来季、いい補強ができる保証はどこにもない。このご時世、右肩上がりを貫くことは簡単ではないのだ。

 円安がどこまで続くか定かではないが、トップチームが伸び悩む混沌とした状況はしばらく続くものと思われる。各チームの問題というより、これはJリーグ全体、ひいては日本サッカーの構造的な問題だ。

 昨季13位だった神戸の手が優勝に届こうとしている一方で、昨季まで6シーズンで4度優勝している川崎は現在9位に沈む。Jリーグはいま、世界でも類を見ない混沌状態にある。代表チームのレベルは右肩上がりでも、Jリーグのレベルは右肩下がり。相殺するとどうなるか。これは思いのほか深刻な問題である。

 

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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