Jリーグから海外へ移籍する流れは定番に 続々決まる若手の欧州行きを福田正博が分析 (2ページ目)
【移籍したい選手に有利な状況】
その流れを変えたのは、長谷部誠だろう。浦和レッズでは主力だったものの、まだ日本代表に定着していないなかで海外移籍。そこでの活躍が認められてから、日本代表での地位を築いていった。
そこから時計の針はさらに進み、現在では日本代表どころか、Jリーグで圧倒的な結果を残していない多くの若手選手にも海外移籍の扉は開いている。
これはJリーグが発足してからの30年で、日本代表がワールドカップに7大会連続で出場し、日本サッカーの進化やレベルが世界に認められたからだ。ただ、それによってJリーグは大きなジレンマを抱えることになったとも言える。
日本人選手への海外クラブからの注目度が高まったことによって、Jリーグ各クラブと選手の契約は、主導権が選手サイドに偏ってしまっているように見える。契約年数は単年、契約条項のなかには海外移籍のオファーがあれば移籍を認めるなどを、クラブ側が受け入れるケースが少なくない。
将来的な海外移籍を視野に入れる選手にすれば、希望が通らないのであれば別のJクラブを探したり、レベルはJリーグよりも低くてもヨーロッパ各国スカウトの目に止まる確率の高い、海外でのプレーを選択したいとの思いがあるのだろう。
対して、Jリーグ各クラブは資金力に限度があり、フロントも難しい契約交渉をしなければならない。こうした背景もあって、Jリーグのシーズンが佳境に向かっていく夏場にも関わらず、欧州主要リーグは毎年秋から始まる新シーズンに向けこの時期に選手の出入りが活発になるため、海外移籍が発生するわけだ。
ブラジルなどのように、莫大な移籍金をクラブに残してくれるのならいいのだが、Jリーグのケースでは契約年数の短さもあって、所属選手が海外移籍をしてもクラブが得られる金額はまだ少ない。これでは選手を引き抜かれたクラブが、チーム力を維持するために代わりの選手を獲ろうにも、資金的な難しさに直面してしまう。
2 / 3