日本代表の座を脅かすU-20世代の台頭はあるか FC東京・松木玖生と俵積田晃太への期待と課題 (3ページ目)
その後も一度は相手にパスカットされたボールを奪い返し、体勢を崩しながら味方に落とすなど、攻撃は非凡さを感じさせた。
ただし、俵積田には成熟する時間が必要だろう。守備ひとつとっても、ボールを後ろから追うだけで、しばしば持ち場を明け渡していた。プレーの連続性も課題だ。
「入団当初の乾貴士は、どこにいるべきか、守備とは何かをわかっていなかった。それをホセ・ルイス・メンディリバル監督が辛抱強く落とし込み、大成させた。それだけの価値があるほど、その技術は貴重だったわけだが」
エイバル時代の乾が日本代表でも活躍するようになった理由を、現地メディアはそう説明していた。日本人アタッカーは技量に優れているが、世界トップで活躍するには守備やプレーの連続性が欠かせない。久保がスペインでブレイクスルーしたのも、そこをクリアできたことが大きいのだ。
そう考えれば、俵積田は飛躍への道筋が見えてくるだろう。
この日、メンバー外だったFC東京の熊田直紀も、スケールの大きさを感じさせるストライカーである。野生的、本能的で、元日本代表FW久保竜彦に近い。U-20W杯ではプロとしての試合経験の少なさを感じさせただけに、どのカテゴリーにせよ、ピッチに立つべきだ。
FC東京以外でも、山根陸(横浜F・マリノス)、中野伸哉(サガン鳥栖)の二人はセンスが傑出している。福井太智(バイエルン)のように、すでに海外でプレーしている例もある。また、1年後には急成長する選手も出てくるだろう。
彼らの若い輝きが森保ジャパンも照らすのだ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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