5点取っても攻撃をやめない「それがミシャのサッカー」 コンサドーレは「想像を絶する」極上のエンタテインメントを提供する (3ページ目)
【時間稼ぎに逃げない美学】
しかも、札幌とすれば2点リードしていた状況である。果たしてそこまでリスクをかける必要があったのだろうか。それでもペトロヴィッチ監督は、ことなげに言うのだ。
「ゴールを狙う選択をした結果があの失点になったと思うが、逆に言えば、それがゴールになったかもしれない。そこは『たら・れば』の話だが、ゴールを目指していく戦い方のもとで起こってしまった出来事だと思っている」
3-1とリードした時点で、札幌はバランスを取った戦いに移行してもよかった。選手たちも余計な失点が続いたことに対して、反省の言葉を並べた。それでも根本にあるのは、あくまで攻撃姿勢である。
田中のゴールで5-4と勝ち越したのち、札幌にはもう一度、カウンターから相手陣内に攻め入る場面があった。そこで無理をせず、コーナー付近にボールを運んで、時間稼ぎをすることも可能なはずだった。
しかし、札幌の選手たちはそれでも追加点を狙いにいき、実際にあわやという場面を作っている。そのプレーを選択した荒野は、胸を張ってこう答えた。
「それがミシャサッカーだと思う。チームとして最後に勝ち越したからといって守るんじゃなくて、隙あらばもう1点、取りに行く。そういう姿勢は出せたのかなと思います」
サンフレッチェ広島を皮切りに、浦和レッズにも攻撃スタイルを植えつけ、札幌の選手たちの意識も大きく変えた。類(たぐい)まれなる戦術家であり、美しさを求めるロマンチストでもある「ミシャ」ことペトロヴィッチ監督は、一貫してブレることなくサッカーの魅力を発信し続ける"偉大な伝道師"でもある。
著者プロフィール
原山裕平 (はらやま・ゆうへい)
スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。
【画像・図】コンサドーレ札幌の布陣は?2023 J1全18チーム序盤戦フォーメーション
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