FC東京・仲川輝人が取り戻した稲妻のような鋭さ 先制弾&2度のVAR介入ファウル誘発で勝利に貢献 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【世界にまず存在しないタイプの選手】

 仲川が再び見せ場を作ったのは後半の12分だった。FC東京の右SB中村帆高が、対峙する新潟の左ウイング三戸舜介を潰したそのこぼれ球を拾うと、仲川は相手の真ん中をスポードドリブルで切り裂いた。

 まずCBの千葉和彦をひらりとかわす。次なる相手、舞行龍ジェームズのタックルを、軽業師のごとくアクロバットに越えようとしたその瞬間だった。足が掛かり、仲川は空中に大きく放り出された。VARのチェックが入るのは当然だった。判定はPKだ。

 仲川は先制点のみならず、PKもゲットした。キッカーのディエゴ・オリヴェイラが、これを外したため、スコアは動かなかったが、仲川の存在感はこのワンプレーでさらに上昇した。

 ダメ押しは後半20分のプレーだった。自軍ペナルティエリアで、交代で入ったばかりの新潟FW小見洋太がシュートを放つ。ブロックされたそのこぼれ球を拾ったのが仲川だった。自陣エリア内から始まったそのドリブルは、ハーフウェイライン手前まで40メートルも前進した。背後から執拗にマークしながら追いかける小見をブロックしながら、である。
 
 だが仲川は倒れない。小見はやむなく反則行為に出た。判定はイエローカードだったが、レッドカードの可能性ありということでVARが入った。

 判定はイエローから変わらなかったが、仲川は舞行龍ジェームズから受けたタックルと、このタックルと合わせて大きな反則を2度にわたり浴び、それぞれVARを介入させたことになる。これまでこうしたケースはどれほどあっただろうか。滅多にない話であることは間違いない。

 大活躍の証である。仲川は小見から浴びたこのラフプレーで足を痛め、後半22分という早い時間にベンチに退いたが、その活躍はまさにマン・オブ・ザ・マッチ級に値した。

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