今季未勝利の横浜FCの現状を残酷なまでに映し出した逆転負け 長いトンネルの出口はいまだ見えず (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images

 ロースコアの展開で我慢が利かず、ひとつの失点が大量失点を呼んでしまう。今季の横浜FCにはそうした試合が少なくない。

 勝っていないのだから、勝ちパターンが確立されるはずがない、と言ってしまえばそれまでだが、「さあ、これから」という状況でも何かが徹底される様子は見られず、攻守ともに中途半端。何となく攻め、何となく守っている間に、失点を重ねてしまうというのが現在の印象だ。このままの戦いを続けていては、長いトンネルの出口はなかなか見えてこないだろう。

 対照的だったのは、横浜FCに逆転勝ちした札幌である。

 札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は「強風のなかでのゲームは、サッカーが一番やりにくい。雨のほうが、まだボールをコントロールできる」と話していたが、その難しさは両チームにとって同条件。横浜FCにだけ不利に働いたわけではない。

 そんななか、札幌は風の影響を受けにくい"地上戦"を徹底。グラウンダーのショートパスをテンポよくつなぎ、横浜FCゴールへ向かうことにこだわった。

 最後尾で再三ビルドアップに加わった、GK菅野孝憲は語る。

「(つなぐことを)怖がるのは絶対にダメだが、ミスして失点するのもよくない。そのギリギリのラインで挑戦を続けないと、その先もないので。リスクがあったとしても、僕らは自分たちのボール保持を上げていかなくてはいけないチーム。怖がってるだけでは成長できない」

 特に札幌が風下に立った後半は、最悪の場合にもロングボールで逃げることがままならず、相手のハイプレスを受けやすい状況にあった。当然、低い位置からパスをつなぐには相当なリスクが生じていたはずである。

 だが、それでも札幌は自分たちのスタイルを貫き、多くの決定機を作り出すことに成功した。得失点差のマイナスがかさむ横浜FCにとっては、4失点で済んだことはむしろ幸運だったかもしれない。

 横浜FCが強風下で喫した今季7敗目には、確かに不運もあった。しかし、それだけで勝敗が決してしまうほど、両者の実力差が小さくなかったことも確かである。

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