川崎フロンターレと鹿島アントラーズに優勝の目はまだあるのか 福田正博は「負け数のリミット」を分析した (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Kishiku Torao

【優勝の目がなくなるとさらに厳しくなる】

 福岡戦でもうひとつ気になったのは、試合途中から鈴木優磨や知念慶といったリーグ戦の主力組をピッチに送り出したことだ。岩政大樹監督が彼らを起用した意図を想像すれば、この福岡戦の直前のリーグ戦(第8節・4月15日)でヴィッセル神戸に喫した1-5の大敗を払拭したかったのではないか。神戸戦に敗れてリーグ戦は4連敗。重苦しい状況を変えたくて、ルヴァンカップの福岡戦は途中から主力組を出して勝利を目指したと思うが、それは裏目に出た。

 そうしたなかで迎えたリーグの4月23日のアウェーでのアルビレックス新潟戦は、負ければチームが崩壊しても不思議ではなかったなかで2-0で勝利した。悪い流れを断ち切れたのは大きい。勝利に優る良薬はないだけに、いいキッカケにしてもらいたい。

 ただ、今季の鹿島は上位進出が目標のチームではない。優勝争いに加わるために戦力を整えているチームが、優勝争いに加わっていくために許される負け数のリミットまで、あと3試合しかない。しかも、これは混戦になって勝ち点70以下での優勝争いになった場合のことで、優勝への勝ち点が高まれば鹿島が優勝争いに加わる芽はついえてしまう。

 それだけに鹿島には、今後もチームマネジメントの難しさがつねにつきまとうことになる。優勝争いをするために準備してきたチームが早々に脱落した場合、「目標を切り替えて上位進出」と言葉にするほど簡単ではないからだ。

 目標を失えば監督の求心力が低下し、坂を転げ落ちるように負けがこむことは往々にしてある。優勝争いは首の皮一枚つながったような状況の鹿島が、ここからどうなるかは注視していきたい。

福田正博 
ふくだ・まさひろ/1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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