浦和レッズ好調の要因は秩序正しく入れ替わる攻撃陣 多機能型アタッカー・大久保智明が中心だ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

【見せたドリブル&フェイントの切れ味】

 再び浦和のウイングプレーが決まったのは2-1で迎えた後半50分(アディショナルタイム)。関根に代わり右ウイングとして出場した、元デンマーク代表のダヴィド・モーベルグの華麗なドリブル&折り返しが決まると、札幌のCB田中駿汰は、懸命のスライディングを試みた。それがそのままオウンゴールを誘ったわけだが、高い位置で構える左右のウイングにボールが収まるサッカーは最後まで健在だった。

 ウイングがパス回しの中継基地になるサッカー。欧州の匂い漂う正統派の攻撃的サッカーだ。日本人選手が主役なので、たとえばマンチェスター・シティやブライトン等と比べると小粒に感じるが、山椒のごとくピリリと辛くなれるか。

 前線のアタッカー陣4人のなかでフルタイム出場を果たしたのは中央大学卒の3年目、大久保だった。開幕以来8戦連続の先発出場である。フルタイム出場はこの試合を含めて4試合。アタッカーとしては目立って長い出場時間だ。

 先発出場が6試合だった一昨季、13試合だった昨季との比較でも、出場時間の増加は顕著になる。スコルジャサッカーの申し子と言いきるのは時期尚早という気もするが、右も左も真ん中もできる多機能性を監督が重宝がっていることは確かだ。

 この札幌戦での一番の見せ場は、前半のアディショナルタイム、右サイドに移動した際に披露したウイングプレーだ。大久保は小刻みなステップで深々とゴールライン際まで進出。対峙する福森晃斗をテクニカルなドリブル&フェイントで抜き去った。狭いスペースの中、逆を取る動きで福森の股間にボールを通し、折り返すと、それを受けた伊藤敦樹がゴール正面から強シュートを放った。右足のそのインステップは左ポストをわずかにそれていったが、瞬間、屈辱感を味わって頭を抱えた福森の表情に、そのドリブル&フェイントの切れ味の程が投影されていた。

 前線が秩序正しく入れ替わる浦和攻撃陣。その中心選手として活躍する大久保。彼らを裏で操るスコルジャ采配ともども目が離せなくなってきた。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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