浦和レッズ好調の要因は秩序正しく入れ替わる攻撃陣 多機能型アタッカー・大久保智明が中心だ
第7節を終えて6位だった浦和レッズは、翌第8節は北海道コンサドーレ札幌を4-1で下し、順位を4位まで上げた。5勝1分け2敗、勝ち点16。首位を行くヴィッセル神戸を勝ち点3差で追走する。スタートダッシュには成功したかに見えるが、開幕後の2試合は連敗だった。それからの6試合を、5勝1分けの好成績できているわけだ。いまJ1リーグで最も調子がいいと言える。
札幌戦。先制点が生まれたのは後半23分。札幌が退場者を出し10人になったのは前半34分なので、浦和はそこまで苦戦を強いられていた。救世主となった得点者はアレクサンダー・ショルツ。定位置であるセンターバックの位置から攻め上がり、右ウイングの位置で開いて構えた関根貴大にボールを預けると、その足でゴール前へと駆け上がった。
その折り返しのボールをショルツ自ら合わせ先制点としたが、筆者の目を捉えたのは、関根のシンプルで的確なウイングプレーだった。対峙する札幌の左ウイングバック菅大輝を無抵抗にさせる身のこなしと、差し込むように折り返したインサイドキックによる球出しである。
この時は右でプレーしていた関根だが、そのスタートポジションは4-2-3-1の左ウイングだ。大久保智明が右ウイングを務めるが両者は試合中、高い確率で入れ替わる。左右のウイングが試合の流れのなかでポジションを入れ替える例は、あちこちでよく見られるが、関根と大久保はそのなかでも入れ替わる回数が多い。
浦和レッズ入団3シーズン目、すっかり先発に定着した大久保智明この記事に関連する写真を見る 右利きの関根に対し大久保は左利きだ。ショルツが攻め上がったとき、左足でボールを扱う大久保が右に位置していたら、あの角度からボールは返ってこなかったと思われる。両者の入れ替わりが奏功したゴールといっても過言ではない。
関根は文字どおりのサイドアタッカーだが、大久保には真ん中(1トップ下)でもプレーできる一段上の多機能性がある。通常、1トップ下を務める小泉佳穂が入れ替わるというより、大久保が1トップ下で小泉が左を基本線にポジションを取ることもある。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。